これが無差別級ボクシングの大迫力っ!!
任天堂から空前のデカキャラアクションゲームが発売!
どらららっ!1987年はファミコンボクシングゲームにとって、いやさ、後のゲーム史にとって超重要な年になったのだ~っ!!
そう!1987年6月に発売されたナムコの『ファミリーボクシング』に続いて11月には満を持して『マイクタイソン・パンチアウト!!』を任天堂が発売したっ!
今回は任天堂の快作『マイクタイソン・パンチアウト!!』を熱狂大紹介するぞっ!!よけて打つべし!! かわして打つべし!! 決めろカウンター!! 唸れ必殺アッパーカットっ!!
←お~っ! かっくいいっ! まるで映画の予告みたいだぜ!
リトル・マックとドック・ルイス。二人の戦いが今、始まる…
これは勝利への物語なのだ!!
ドデカキャラがリングを圧巻席巻!!
キミんちのテレビ画面にビッグな敵キャラがど~んと登場!! 驚きの大迫力に圧倒されるぞ!!
でかっ! ピストン本田の強烈アッパーが空を切った!! こえ~っ!!
↓この大男に勝つことができるのかっ!?
『マイクタイソン・パンチアウト!!』の魅力はなんといってもこのデカキャラ達!!
小柄なリトル・マックとの対比も相まって敵キャラが余計に大きく感じるのだっ!!
蝶のように舞い、蜂のように刺す!よけてかわして打つべし打つべし!!
抜群の操作性が瞬間の戦いを演出するぞっ!!
ジ、ジョー・・・おめえってやつぁ・・・
←おりゃっ! あれ・・・? 必殺アッパーカットはかわされやすいから打ち所が重要だ!!
『マイクタイソン・パンチアウト!!』は操作性がバツグン!! キミの反射神経がそのままリトル・マックの動きに反映されて、動く動く。瞬きも許されない相手のスキを狙い撃ちするのだっ! 緊張感もすごいぜ~~っ!!
戦いはクライマックスへ!!
個性豊かなライバル達が続々登場!!
ドイツの皇帝、南の島の大王、でっかいハゲ、大日本人、筋肉おばけ、そしてマイク・タイソンっ!!
↑体重不明はやばすぎない?
めっさ笑ってるやん・・・
めっさ踊ってるやん・・・
『パンチアウト!!』最大の魅力は個性的な敵キャラクター!! 次から次へと面白い敵キャラが出てくるからワクワクが止まらないっ! 個性的な彼らは戦い方も個性的だから、よく考えて戦う必要があるのだっ!! うぉぉっ!待ってろタイソ~ン!!
こんにちは。モジゃもんです。ここからは僕が”パンチアウト”で遊ぶときにやっている攻略法をお教えします。同じゲームで遊んでいるクラスの友だちの話、くらいの距離感で見てくれるとうれしいです。
その1
相手のパンチ前モーションをよく見ようっ!!
パンチアウトは相手の動きに合わせて動く、受け身対応型ボクシングです!
『パンチアウト!!』は敵キャラの動きをよく見て素早く対応。これが基本です。初めはむつかしいですが、これが面白さの肝なので先ずは相手をよく見てください。
その2
必殺アッパーカットはすぐ使おうっ!!
必殺技は溜めておく意味がないので星が出たらすぐ使ってOKです!
星が出たら、ジャブってアッパー!
あら・・・。
敵キャラ毎にパンチが特定のタイミングでヒットすると星がキラっと飛び出します。この星が出た回数がそのまま必殺アッパーカットの打てる回数になるのですが、この数。敵のパンチを受けると減ってしまうのですぐ使う方が得策です。
その3
敵の動きを覚えようとして覚えようっ!!
はい、そうです。このゲームはなんだかんだで覚えゲーです。なのでラウンド開始前から全身で覚えるぞって感じで前のめりに意識を集中させてください。そうすれば・・・
こうなって!
って、あれ・・・タイソンは??
い・・・以上です。スタジオさーん!!
では、ここからは私、モジゃもんがじっくり考えて決めた懐かしいゲームをたっぷり遊んで評論させていただいて、再び神作となるサイシンサクか、思い出補正だけが拠り所の懐古ゲームかを考える「ゲーム再神作徒然話」です。
今回遊んだのはFC版『マイクタイソン・パンチアウト!!』です。1984年にAC版『パンチアウト!!』が稼働され、FC版の本作は1987年11月21日に発売されています。制作はビッグボス任天堂です。
FC版『パンチアウト!!』は景品版の"タイソンが出ない方”と一般販売版の"タイソンが出てくる方"との二つがあります。先発の景品版は1987年6月14日発売のディスクシステム用ソフト『ゴルフUSコース』のトーナメント企画の景品として制作された、とされています。僕はこれ正直、なんのこっちゃ!? って思ったので少し調べました。
このゲームの景品だった
ゲームのゴルフトーナメントって何?って感じなのですが、『ゴルフUSコース』でスコアを競いましょうっていう任天堂の公式企画なんです。オンラインもない時代に一体どう行ったのか! って気になりますよね。これね、僕も全然覚えていなかったのですが、ディスクシステムにはとあるキャッチがあったんです・・・
”夢が送れるディスクシステム”
はい。ディスクシステムは夢が送れちゃうんです。どういうことかというと、当時の任天堂ソフト取り扱い店舗にはディスクシステム用ゲームデータ書き換え専用のポストみたいな機械が置いてありました。この機械を『ディスクライター』と呼びます。これは覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。僕も鮮明に覚えています。
んで、この機械と見た目そっくりの機械がもう一つありまして、そっちは『ディスクファックス』と呼びます・・・って、そんなもんあったっけ? 全然覚えてないZE!
このファックスの機能がディスクにセーブしたデータを任天堂に送れるというものだったそうです。ファミコンのROMカセットはセーブできること自体が珍しかったですし、データのやり取りなんて到底不可能でした。ディスクシステムはそれを可能にした画期的なものだったんですね。任天堂すげえ・・・んなことやってたんか。
もうおわかりですよね。『ゴルフUSコース』のゴルフトーナメントとはこの機能を利用したイベントだったわけです。当時の任天堂は同ゲーム発売日の6月14日から8月31日までを大会開催期間としてデータを募集しています。夏休みの終わりまでってところがニクイですな!
んで、この大会の上位10,000人に『パンチアウト!!』が配られた、というわけだったんですね。当時のCMを某巨大動画サイトで観てみると「どんどん参加!それそれ参加!」なんて楽しくアナウンスされてました。特に面白いのが、そのCMの最後に「合計10,000名様に幻のソフト『パンチアウト!!』をプレゼント!」って言ってるんです。
良いですよねこれ。「マボロシ」って80年代には多様されていたキッズワードだった気がします。幻のなんちゃらって最近はあまり聞きませんが、昔は確かによく使っていましたし、よく見かけました。
景品の発送以前にもう自社で幻認定しちゃってるこの景品版『パンチアウト!!』これの後発として『マイクタイソン・パンチアウト!!』がいよいよ登場と、相成ったわけで御座います。
ですけどね。先述のゴルフ企画の応募期間が8月31日までですよ。で”タイソン出る方”の発売は11月21日です。めっさ期間短いですよね。3か月未満です。ということは、任天堂はハナからタイソンくっつけて一般販売する予定だったんじゃないの? と、思ったりするのですが、公式には「欲しいという声がたくさん寄せられたから」くらいの理由で話されていました。
社長が訊く『PUNCH-OUT!!』 (nintendo.co.jp)
いやいや、8月31日に応募締め切って、景品発送して、プレイした人のリアクションが任天堂に寄せられて、一般販売企画して、タイソンサイドに許可取って、タイソンのキャラデザして・・・・って、
三か月じゃ無理じゃね?
しかも、この”タイソン出る方”の発売によって、任天堂のアナウンス通り、後追い的に景品版は本当に幻になっていく辺り・・・任天堂の企画力のしたたかさをビンビン感じます。(ちなみにこの話、色々調べていくうちに”真相”がわかったので後述致します)
というわけで、繰り返しになりますがFC版『マイクタイソン・パンチアウト!!』が正式に一般発売されたのは1987年11月21日となります。調べてみて面白かったのは数ある任天堂のゲームソフトの中でもマイク・タイソンの様に実在の人物がゲーム名に冠されたソフトは数作しかないんです。タイソンの他は誰かといいますと・・・
プロ雀士 井出陽介
このお名前、ファミコン時代にも麻雀ゲームでお見掛けしましたよね。
医学博士 川島隆太
DS『東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング』2005年5月19日発売
言わずと知れた脳トレ先生です。
漫画家 さくらももこ
GBA『さくらももこのウキウキカーニバル』2002年7月5日発売
こんなソフトあったんですね、知りませんでした。
ほぼ日 糸井重里
マザー以外にもね。なんならHAL研の役員だったみたいですし。
FCD『中山美穂のトキメキハイスクール』1987年12月1日発売
ミポリ~ン!! ってか、タイソンと発売日がめっさ近い!!
詳細は割愛しますが、このゲームも上述の夢が送れるファックス要素があります。
面白いですよね。天下の任天堂のソフトに名前が冠されたことがある著名人はタイソン含めて6名のみ(見落としがあればご指摘下さい)しかもこのラインナップですから。あの人と”やっと会う”前のミポリンと統一王者になったばかりのタイソンの二人は、自分の名前が冠されたゲームが制作販売されることを知ってたのかな・・・
と思ったら、お二人とも思いっきり当時のCMに本人出演されていました。ミポリンは可愛すぎるわ、タイソンは恐すぎるわ、マジで見応えあります。是非検索してご覧になって下さい。
てか、ミポリンが絶美人すぎて、この記事から中山美穂関連検索でネットの海に泳ぎだしていく人が一定数いそう・・・。I・KA・NA・I・DE!!
『マイクタイソン・パンチアウト!!』に話を戻します。僕の本作との出会いは正に衝撃でした。80年代のとある日、兄に連れられて、兄の友達の家に行きました。その家にあがると六畳くらいの居間にドーンと大きいテレビがあって、そのテレビで遊ばせてもらったのが『マイクタイソン・パンチアウト!!』だったんです。
それはそれはキャラが大きく見えたんですね。なんせテレビは大きいし、僕はまだ小さかったですから。んで、兄と僕とその友人の3人でしばらく遊ぶんですけど、グレートタイガーがまったく倒せないんです。マジックパンチの攻略がちっともわからなくて三人でわーわーと。それまでのファミコンソフトとは異質な興奮があったことを鮮明に記憶しています。
上記したリンク先に詳しく出ていますが、AC版を制作された中心人物は竹田玄洋さんと宮本茂さんだったそうです。現在の宮本さんは文化功労者ですし、竹田さんは特別顧問の肩書でいらして、お二人とも任天堂の超お偉方です。
そしてFC版を制作された中心人物は竹田玄洋さんと和田誠さんだったそうです。当時の話、和田さんがレフリーのマリオをデザインした際、チェック体制が今より甘かったらしく「僕が勝手に描いたからちょっとおかしなマリオ」なんてリンク先のインタビューで仰っていました。
音楽の担当は山本健誌さん、兼岡行男さん、中塚章人さんの三名がクレジットされています。御三方共にまごうことなきゲーム音楽黎明期の巨人です。
本作は任天堂最初期のサウンドを担当されていた兼岡さんと1984年入社の中塚さんと比較すると、ややお若い1987年入社の山本さんがメインで担当されていたようです。
86年入社の和田誠さんと87年入社の山本健誌さんが起用されている辺りを鑑みるに、FC版『パンチアウト!!』は若いチームにメインで制作させよう、なんて意図が会社側にあったのかもしれませんね。そうなると何故最初は景品版で発表されたのか、わかるような気がしないでもないがどうなんでしょう。
『パンチアウト!!』はAC版にも続編があり、これのほぼ移植作のようなモノが1998年3月1日にニンテンドウパワーで出ています。2009年には満を持してWii版が発売されました。Wiiの北米版ではセコンドのドック・ルイスと戦えるバージョンもあるようです。
非常にマニアックなニンテンドウパワー版の『スーパーパンチアウト!!』はさぞスーパー面白いんだろうな、と思って僕も遊んでみましたが・・・。やっぱり面白いんだけどスーパーではないかなくらいの薄い印象でした。すいません!
『パンチアウト!!』が持つ一定の面白さはあるけど、FC版のような爽快感と軽快さには欠けると思います。ご興味があればSwitchにもダウンロード版があるので是非!
スーパーファミコン Nintendo Switch Online ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)
Wii版の方は後で詳しく話しますが、かなり面白いです。FC版の話をする前にこちらの話をするのも決まりが悪いので後に回させてください。ここではキングヒッポーの人格が完全にウホウホゴリラで獣人化していたことだけを報告して次へ参りたいと思います。奴はゾオン系です。
こんなところで枕話はそろそろ切り上げて本題に入りたいと思います。今回はボクシングが題材のゲームなので長くなりそうだなと敬遠していたのですが『パンチアウト‼』は今でも年に2回くらいはついつい遊んでしまう作品ですし、やったらやったでいつも「やっぱ面白い」と感じるのは何故なんだ!? に迫るためにも行ってみたいと思います。長いYO? それではレッツゴー!!
『マイクタイソン・パンチアウト!!』はゲームの面白さの本質を体感できるゲームだった
〜ボクシングから考えるゲームの面白さの秘密〜
今回は『マイクタイソン・パンチアウト!!』が何年経っても色褪せない面白さがあるのはなんでなん? という疑問を考えていきます。
なので先ずは基礎となっている『ボクシングゲーム』ひいては『ボクシング』そのものについてざっくりと見て、ボクシングの面白さって何?について迫りたいと思います。
ほんで、わかったことを『マイクタイソン・パンチアウト!!』に照らして、このゲームの特徴を紐解きながら”ゲームの面白さの本質”にまで辿り着こうって、内容でいこうかしら・・・って堅い? 大丈夫なのかこれ・・・
ちょっと一回ミポリン挟みましょう!
絶美人再び
ちょっと待て!「ミポリン」検索っと、じゃないんだよ!!
格闘ゲームのルーツはボクシングゲームにあった
さて気を取り直しまして『パンチアウト!!』と言ったら、とにもかくにもボクシングゲームです。そもそもボクシングゲームって今現在でも携帯アプリはもちろん、新しいハードが登場するとほぼ間違いなく新作が作られるゲームの一つですよね。
ってことは、ボクシングゲームってジャンルが確立されてることがわかるんですけど『マイクタイソン・パンチアウト!!』発表当時の87年11月までにはどんなボクシングゲームがあったのかなってことで見てみると・・・
1『 ヘビーウェイトチャンプ』セガ
3『ヘビーボクシング』 HAL研究所
4『チャンピオン・ボクシング』セガ
7『キングオブボクサー』ウッドプレイス
10『ロッキー』セガ
11『ファミリーボクシング』ナムコ
こんな感じで見つかりました。順々にボクシングゲームの歴史を見ていくとある重大な事実にたどり着くんです。それはなんと・・・
任天堂がマイクタイソンを『パンチアウト!!』に採用したことは必然だった
ってことなんです。うそーーん。いやいや嘘ではないです。それでは一緒に見ていきましょう。
『 ヘビーウェイトチャンプ』76年10月 セガ AC
なんともボクシングに見えないゲーム画面ですが、こちらゲーム史にとって重要な作品とされています。世界初のボクシングゲームであると同時に世界初の対戦格闘ゲームだそうです。すげ~!今や筐体もほとんど残ってないらしく”幻”の作品。
『BOXING』80年 アクティビジョン ATARI2600
こちら俯瞰視点のボクシングでございます。パッと見寂しいゲーム画面ですが、プレイ動画を見てみると効果音がボコんボコん鳴ってて結構面白そうでした。連打ゲームらしいです。しかしアクティビジョンもこんな黎明期からの会社だったとは! 不勉強でした。
HAL研究所のボクシングです。画面がかなりボクシングらしくなってきました。特筆すべきなのは体力ゲージですよね。それと大事なのは、かなりピコピコですがBGMっぽいものが少しついてるんです。さすがHAL研。かなり歩みが進んだ印象。
『チャンピオン・ボクシング』84年10月 セガ SG-1000
セガのボクシング第二弾です。こちらは『シェンムー』でご存知の鈴木裕さんが初めてディレクションした作品且つ『ファンタシースター』等のデザイナー小玉理恵子さんが初めてキャラデザした作品として記念碑的な作品となっています。上段下段のガードが登場、体力ゲージ、前進後退、2D、画面端不利などなど、後の格ゲー要素がてんこ盛りです。鈴木裕さん流石です!
『アーバンチャンピオン』84年11月 任天堂 FC
これをボクシングととるか? というと異論ありますが、ボクシングゲーム史はもちろん格闘ゲーム史にとっても超重要作品なのでとりあげます。今回調べてみて驚いたのはこのゲームがセガの『チャンピオン・ボクシング』の影響を多分に受けているということでした。なんならタイトルにも”チャンピオン”て入ってるしね。
上段下段のガードと前進後退の要素及び2Dとキャラの大きさなどは非常に『チャンピオン・ボクシング』しています。しかし、この作品の凄さはヒットバックと吹っ飛ばしダウンからのライン上げ、という現在の2D格ゲーでも非常に重要な要素が肝になっているよってことです。
更に! 大パンチと小パンチの差別化がされていることで、これまでは相手に詰め寄ってボタン連打するだけだったボクシングゲームの単調な戦いから、間合いを取り合ってパンチを”当てる・置く・差し返す”という2D格ゲーにおける地上戦の基本概念を生み出すことに成功しちゃってます。任天堂すごすぎっ!ゲーム界のコペルニクスや~~!!
しかも、今回の僕の結論に関わるのですが『アーバンチャンピオン』の面白さと『マイクタイソン・パンチアウト』の面白さは本質的に同じ部分があるんです。う~ん、盛り上がってまいりました!
ここでいよいよ『パンチアウト‼』の登場ですね・・・って、おいおいおい!嘘だろっ! ってくらいここでボクシングゲームの歴史的飛躍が起きちゃってます。何かわかりますか? ・・・その通り! 現在でもボクシングゲームで主流のサードパーソン視点。これを初めてボクシングに採用したのは『パンチアウト‼』だったんですね。僕は正直知りませんでした。すげ~。
このサードパーソン視点はアーケード筐体に文字通り”対峙して”プレイする、というプレイスタイルに相性がいいですよね。2D格闘ゲームの王『ストリートファイター』の筐体も立ってプレイするものがありましたが必然性皆無でした。しかもあれ、ボタンがくっそでかかったし、なんだったのあれ・・・?
で、この『パンチアウト‼』のヒット以降、ボクシングゲームにサードパーソン視点型というジャンルが一つ追加される、というわけだったのであります。
で、なんだったのこれ
『キングオブボクサー』85年 ウッドプレイス AC
みなさんご存知、ウッドプレイスのKOBこと『キングオブボクサー』です・・・って、なんじゃそれ!? これナムコの『ファミリーボクシング』やんけーやんけーせやんけワレー・・・。と驚いてしまいますよね。
先ず、ウッドプレイスという会社はニチブツこと日本物産から独立された方が興した会社で、当時はデータイーストと販売や製造で提携があったようです。海外では『リングキング』という名前でデータイースト表記になって発売流通されていたみたいなのですが、それはFC版なんです。ん?? どゆこと?? デコゲーなの?
これ、ゲーム性は完全に『ファミリーボクシング』です。これまでのボクシングゲームの歴史からみると孤高のオリジナリティですよね。視点は奥行きのある若干俯瞰気味のサイドビューで、ベルスクっぽいけどもう少し上からの視点のような、要はキャラが縦並びになることができる。現在の3Dボクシングゲームのひな型ととれなくもないです。
調べていて気付いたのですが、このゲーム性にそっくりのゲームがありました。
カネコの『火激』88年です。
『火激』は88年ですので87年にFC版の『ファミリーボクシング』が発売された後なんですね。確かに『火激』のプレイ感と『ファミリーボクシング』のプレイ感は似ていますよね。
満を持して参戦『コナミのボクシング』です。はい、やっちゃってます。ここまで見てくれば一目瞭然、セガの『チャンピオン・ボクシング』に酷似しています。ちょっとこれは擁護しがたいかな・・・ま、まあ芸術もどんな文化的作品もこんな風にいい所を取り合って新しいものが作られて、文化は発展していくので、僕は制作自体を支持しますよ!
だけどこれ、わざわざ『コナミの』って入れなきゃわかってもらえないかもって自社サイドで腰が引き気味なのが見えちゃってるし。MSXなら大丈夫じゃね? って思ってた気もしちゃう。
あえて言うなら、この85年にコナミは『イー・アル・カンフー』という後の格ゲーの発展に大きなレガシィを残しているので、そっちが忙しかったってことにしますか?ね。
『スーパーパンチアウト‼』85年 任天堂 AC
AC『パンチアウト‼』の続編です。任天堂のインタビュー記事によるとゲームセンターで『パンチアウト‼』のインカムがかなり良く、その人気を受けての制作だったそうです。
キャラクタ以外の新要素にダッキングが加えられているのですが、このAC版のダッキングはどうだったんですかねぇ。意味あったのかしらん。
『ロッキー』87年4月19日 SEGA MkⅢ
遂に来ました。87年の4月に”ロッキー”の登場です。だけど、ちょっと一回待ってください!
この作品に入る前に確認しておいた方が面白い事項があるんです。
お気づきだとは思うのですが、ここまでボクシングゲームの歴史を振り返ってみると次のことがわかりましたよね。はい、そうです。
そうなんです。自社それぞれで面白いゲームを作ることに必死なのは当たり前なので競い合っているというと少し煽りすぎかとは思いますが、歴史を見てくるとそう見えなくもないですよね。
ここまでのボクシングゲーム史において・・・
セガはサイドビュー型
任天堂はサードパーソン視点型
で来ていますよね。
んで、任天堂が『アーバンチャンピオン』をボクシングではなくストリートファイトにしたことは『コナミのボクシング』の様に「任天堂のボクシング」と冠さざるを得ないようなイタイ事を避けるだけではなく、任天堂のボクシングはサードパーソン視点だよ、セガのボクシングはサイドビューだけどね、という二元的という意味での対立構造を作った。と一先ずは見ることができますよね。
これが一つ目の確認事項です。で、もう一つ確認しておきたいことは超わかりやすい。なんなら現在でも一定の年齢層には通用することなのですが、
”ロッキー”はボクシングのシンボルとして機能している
ってことです。80年代はロッキーランボージャッキーチェンですからね!ってのは半分冗談ですが、87年当時日本でもロッキーは85年『ロッキー4/炎の友情』の大ヒットを受けて国民的人気者でした。役者スタローン自身も大人気で贈答用ハムのCMとかに出ていました。ハムとロッキーのイメージってなぜかすげえ合う気がするの謎。
というわけで、サイドビュー型のセガボクシング、サードパーソン視点型の任天堂ボクシング、それと圧倒的なロッキーの人気、という文化的背景を確認した上で!!
セガのロッキー採用なわけです。
このゲーム『チャンピオン・ボクシング』の進化系といった感じで、ビジュアルも綺麗ですし、フレーム枚数も多くてキャラがグリグリ動きます。そしてちゃっかり”ダッキング”や”大パンチ”、それにパンチを受けた時のヒットバックも入って任天堂サイドの気の利いた要素を取り込んでます。やるなセガ!!
オリジナル要素としては試合前にボタン連打連打のトレーニングがあります。とってつけたようなおまけ要素感否めませんが、以前紹介した『激闘プロレス』にしっかり受け継がれています。
しかし、この時代のボクシングにおける巨大な存在”ロッキー”を持ってかれた任天堂サイド。残されたカードは・・・って考えてみるとワクワクしませんか? 僕は鼻血でてます。
『ファミリーボクシング』87年6月19日 ナムコ FC
出ました! 名作『ファミリーボクシング』です。もう説明不要だと思うのですが、本稿における要点だけ確認するとこの作品がファミコンで最初のボクシングゲームだぜってことです。僕も大好きでめさくさやりました。
発売日は87年の6月です。『マイクタイソン・パンチアウト』が同年11月の発売なので、実はこっちが先発になるんですね。ふむふむ。
この『ファミリーボクシング』はファミコン本体自体の圧倒的所有率ということを鑑みると、ここまで見てきたボクシングゲーム史において、この時点で最もプレイ人口が多かったと思われます。発売後すぐにナムコは全国大会を主催しているので、ハナから「どうせ売れるっしょ」の自信とファミコンバブルの余裕を感じますな!
■まとめ
というわけで、ここまで『マイクタイソン・パンチアウト』が発売される87年11月までのボクシングゲームの歴史を振り返ってみました。色々なことがわかってきましたよね。
ボクシングゲームのルーツを辿るとそれはそのまま対戦格闘ゲームのルーツでもありました。鈴木裕さんのサイドビューボクシング『チャンピオンボクシング』の良いところを任天堂の『アーバンチャンピオン』が推し広げて後の2D格ゲーの誕生に多大な貢献を残したことは感慨深いものがあります。
もしもあそこで任天堂が『アーバンチャンピオン』を「任天堂のボクシング」として制作していたらカプコンの『ストリートファイター』は生まれなかった可能性すら感じることができました。
そして、セガが”ロッキー”搭載して新作ボクシングゲームを発表した後、任天堂は”マイクタイソン”搭載して新作ボクシングゲームを発表する流れに至っていたこの事実です。この事実を確認していよいよ『マイクタイソン・パンチアウト!!』の中身に入っていきますよ!
ところで、セガサイドのボクシングゲーム。サイドビューにこだわっていたのかなと思うじゃないですか。任天堂がサードパーソン視点ならウチはサイドビューじゃ~って意気込みかと思っていたら、87年4月に上記『ロッキー』発売後の9月・・・
『へビーウエイトチャンプ』87年9月 セガ AC
あっさり鞍替えしてる~っ!!
ぐぴぴ~っ!!
マイクタイソンだけじゃない! FC版『パンチアウト!!』は海外版”あしたのジョー”だ
いよいよ、『マイクタイソン・パンチアウト!!』の登場です。この作品の面白さを解明するためにも、先ずはこのゲームのストーリーや舞台設定を見てみましょう。
ストーリーは主人公のリトル・マックとセコンドのドック・ルイスのプロフと共に一応説明書に書いてありましたので確認してみると・・・
LITTLE MAC
ニューヨーク ブロンクスに住む17才の若者。ケンカ好きファイター。
DOC LOUIS
年令58歳。その昔、1954年にはアメリカ・ヘビー級の強豪(ハードパンチャー)だった・・・。しかし今では酒におぼれる毎日であった。
ある日、街で彼らは偶然に出会った。
そして、そこから全ては始まった。ドックは酒をやめる決心をし、マックのトレーナーとなり、ボクシングの全てを教え込んだ。この物語は、栄光の勝利をつかむまでの実話である。しかし、その道のりは長く、そして・・・。
泥臭いですよね。たまらんほど昭和です。先ず、マックはブロンクス住みの17才ということなので、日本だとギリギリプロライセンスが取れる年令です。ケンカ好きだそうです。
そしてドックは元ボクサーで今は酒におぼれていると・・・ふむふむ。
そして、二人は街で偶然に出会って、ドックは酒をやめて、ボクシングを教える・・・ふむふむなるほど・・・って、もういちいちボケるのもツッコミ入れるのも無粋なくらいですが
ストーリーはあしたのジョー
ですね。この脚色としての”あしたのジョー”。あしたのジョーファンとして、もし任天堂が勘違いしてるのだとしたら、時を超えてどうしても言っておきたい! ジョーは絶対にケンカ好きではないよ。それにゲームのストーリーが実話ってのはかなり変。あしたのジョーって作品が実際にあるからって意味で実話なのか?
他にも何か脚色に使われたものはないかなと思って、一応本作が出る87年11月までの主だった以下のボクシング映画も観てみました。
『チャンピオン』1949年
『波止場』1954年
『ロッキー』シリーズ 1976年~1985年の4作品
『チャンプ』1979年
『レイジング・ブル』1980年
先ずはカーク・ダグラスのモノクロボクシング映画『チャンピオン』です。なんでも『ロッキー』のシルヴェスタ・スタローンは子供の頃にこの映画を観て感動し、ボクシングを始めたらしいです。八百長が物語のフックになっています。はい、パンチアウト感はないです。ですが、試合のシーンがめっさロッキーっぽくてちょっと驚きました。あの猪木の弓引きパンチのような打ち方ね! あと、息子のマイケル・ダグラスにすげー似てる!!
次いではマーロン・ブランドの『波止場』ですが、これはボクシング映画ではありませんね。この映画も八百長が物語のフックになっています。ギャングに利用されてた労働者階級が暴力や権力に屈せず立ち上がる! といった内容で、正直パンチアウト感ゼロです。名画とされているので未見の方は一度ご覧になって下さい。僕は一回で大丈夫です・・・。
んで、やっぱり『ロッキー』なのですが、ご存知の通り、この映画もアポロサイドが仕掛けてきたカードに咬ませ犬としてロッキーが乗っかるって話なので、八百長って言えなくもない。本当にボクシング絡みの映画には八百長がよく出てきます。
『ロッキー』は名作すぎてちょっと”パンチアウト探し”しながら観るどころじゃなかったのですが、改めて観た感じですと気持ちを鼓舞させるような劇伴とランニングのシーンからの影響は間違いなく『パンチアウト!!』に出てると思います。『ロッキー2』のランニングシーンは子供がゾロゾロついてきて逆にパンチアウト感ないですけどね。
ゲーム史に残るこの名シーンは・・・
やっぱり、誰でもこのランニングのカットインを観るとロッキーがフィラデルフィア美術館の階段を駆け上って両手を上げる、あの朝のランニングを思い起こすと思うんですよね。舞台がアメリカですし。少なくとも少年時代の僕は初めてこのランニングをみたとき「あ、ロッキーだ!」と思いました。
やっぱりこれを彷彿とさせる
だけど、これよく考えるとちょっと面白くて、ドックが自転車に乗ってますよね。自転車に乗ってコーチがランニングに付き合う様は”あしたのジョー”に散見されるシーンなんです。少なくともロッキーでは出てこない。『チャンプ』で息子のTJがランニングの横で自転車に乗ってるシーンが出てくるけど、あれは遊んでる感じですし。
ジョーによく出てくる
それでも『ロッキー』を強く感じるのは、シンボリックな自由の女神が出てきてアメリカだと誰が見てもわかるってことと、山本健誌さんのあの音楽ですよ。あの音楽の避けることのできないロッキー感! 僕はランニングのカットインとあの音楽がなかったらFC版『パンチアウト!!』の評価はかなり下がると思います。
え?なんで? 全然ロッキーと違う音楽じゃん!関係なくね!? と思われたかもしれませんが、そんなことないんです。何故なら上記映画作品ですと、あそこまでバンバン気持ちを高ぶらせる音楽が出てくるのは『ロッキー』シリーズだけなんです。
そして忘れちゃいけない試合中の曲! この試合中の曲が、短いのにイントロもあって、メロディも印象に残るし、何度聴いてもかっこいいんですけど。 この曲、よく聴くとイントロの部分からメロディから『ロッキー3』の挿入歌『Eye of the Tiger』してます。いつも通り勝手に断言します。寄せてます。
以上のことから、映画『ロッキー』の劇伴がなかったら『パンチアウト!!』のゲーム音楽もなかったと考えられます。しかし、あんなに短い曲に闘志湧き上がる虎の目をさせるなんて山本健誌さんもまたゲーム音楽史に残る偉人だ! とゲームの音楽が大好きな僕は嬉しくなりました。
お次は『チャンプ』です。この映画、今回『パンチアウト!!』をやるにあたって初めて観たのですが、これちょっと、、、あのねえ・・・こんなの泣くに決まってんだろっ!! 僕にも娘がいるのですが、これ子供を授かっていなかったとしても同様に泣いてるに決まってる。なので、あなたも観たら泣くに決まってる。タイソンなんて関係ないに決まってる。
最後に『レイジング・ブル』です。僕は他のスコセッシ映画のファンなのですがこの度初めて観ました。白黒映画なんですね。この映画、現在ではデニーロアプローチっていう言葉のおかげで有名な気もするんですけど、内容は人として特に魅力を感じない実在のボクサーの伝記でした。この映画の詳細な意図が知りたいNE! なんとなく『ロッキー』の髪型よりも、こっちの主人公ジェイク・ラモッタの髪型の方がリトル・マックっぽい・・・ような気はしました。
■まとめ
FC版『パンチアウト!!』の公式ストーリーとキャラ設定を見てみると、それは漫画『あしたのジョー』をモチーフに脚色されたものだとわかりました。ランニングのシーンでは『ロッキー』だけではなく『あしたのジョー』からの影響も確認することができ、主要なゲーム内の音楽では映画『ロッキー』シリーズの劇伴を参考に制作していると考えられます。
『ロッキー』以外の映画からは特にこれといった関連性はみつからなかったことからやはりFC版『パンチアウト!!』は『ロッキー』と『あしたのジョー』をモチーフに舞台設定やゲーム内の世界は構築されたとみてほぼ間違いなさそうです。
ちなみに、こういった形で『ロッキー』を持ってきた背景にはセガに『ロッキー』の権利を先取りされていた事実が奏功していると思われます。もしセガではなく任天堂が『ロッキー』の使用権をとっていて『ロッキー・パンチアウト!!』を作っていたらどうなっていたんでしょうね。そっちはそっちでむちゃくちゃ面白そう。
『パンチアウト!!』の面白さはボクシングの面白さ、ボクシングの面白さは人間の本能を魅了する
さぁ、いよいよ今回のメーンイベントに入りたいと思います。『マイクタイソン・パンチアウト!!』を真剣に考えようと決めたらば、やっぱりボクシング自体を掘り下げざるを得ないっしょ!! ってことで勇んで調べてみたのはいいのですが・・・
えっとですね、ボクシングの歴史や成り立ちをボクシングゲームの歴史と同様に振り返っていると膨大な量になってしまいそうなんです。ただでさえ長いこの駄文なので、端的にするために例のPREP法とやらを使ってみたいと思います。もう包み隠さずにハッキリと「PREP法とは」とか検索しながらね!!
それでは行きますよ! つまり、こういうことだったんです。
結論
FC版『パンチアウト!!』は人間が本能的に魅了されてしまう本質を持っているから面白い
ちょっと堅いですか? すいません。だけど僕にはこれ以上の要約はできそうにありません。大事なのは人間なら抗えない面白さがあるよってことなんです。大丈夫ですか?一回ミポリンを見て落ち着いてください。
はい。もうミポリン検索で、そっちへ行ってしまわれても仕方ないと覚悟はできています。
理由
”闘争”若しくは”ボクシング”には人間が本能的に魅了されてしまう本質があるから
と、これが理由になります。もう少しわかりやすく付け足すと・・・
そのボクシングが題材のFC版『パンチアウト!!』は安全な”ボクシング”の疑似体験が可能だから
ってことになると思います。この結論と理由なんですが「魅了」という言葉の語感が人それぞれ違うと思うので悩みました。ここでは、いい意味でも悪い意味でも意識持ってかれるよね!って認識です。「魅了される」を「興味を持つ」にしてもいいかな、と思ったのですが、後者ですと行為に及ぶ前感がすんげー出ちゃうので「魅了」としました(わけのわからん言い訳してすいません)
では、気を取り直しまして、なんでそんなこと言えるの? ってのを具体的に説明していきますですたい! はい!
僕がそもそも『マイクタイソン・パンチアウト!!』を遊んでいて改めて感じたのは・・・もう超不謹慎ですよこれ、だからあまり言いたくないんですけど。正直に言わないと始まらないので勇気を出して言っちゃいます・・・
人が殴り殴られる様って面白くね?
はい。サイコです。ちょっとこれは行き過ぎですか? そんなに白い目で見ないでください。ざっくざくに刺さってます。
それなら、普段社会生活をしていて、
こいつ! ぶん殴りてえ!!
って思うこと、こっちはちょいちょいありますよね。え? ないですか? まあ、ない方がいいに決まってるのでこれ以上は何も言いません。
だけど、少なくとも僕の中では起きてしまっているこの事実を前提に「人が人を殴ること」について探ってみましたところ、めちゃくちゃドンピシャの参考書があったのでそれを先に紹介します。
この本です。『殴り合いの文化史』2019年 樫永真佐夫著 左右社
以下、この本からの引用を度々します。皆さんの顔から興味がすべて抜けきってカラッカラのパリッパリにならないように頑張りますので、どうぞお付き合いください。
先ずこの本を開いてみると、ツカミの文章がもろにそれだったので早速引用します。
拳で殴る暴力は、オランウータンやチンパンジーにも見られる攻撃行動だ。しかし人間のみが拳をシンボルとして用い、拳の文化を発展させてきた。今やボクシングをはじめとする殴り合いのゲームは、巨大な資本主義的な興行ビジネスだ。このように拳で殴る文化がある面で華々しい発展を遂げられたのは、そもそも暴力や闘争には、人を夢中にさせるものがあるからだと、私は思っている。
引用:『殴り合いの文化史』2019年 樫永真佐夫著 左右社 p16.
うん。禿同。要するに、拳で殴る攻撃行動が人間社会で文化的に発展した要因には、人を夢中にさせる何かがあんじゃね? ってことなんですよね。この疑問を探りますよ。
更にこんなことが書いてあります。
私たちも、誰か見知らぬ者同士がいさかいや口論を始めた現場にたまたま居合わせたら、わくわくしたり、どきどきしたりするだろう。あるいは、野球観戦中に選手同士の乱闘でも始まれば、トイレに行くのも後回しにして見入ってしまうのではないだろうか。引用:『殴り合いの文化史』2019年 樫永真佐夫著 左右社 p25.
僕はトイレに先に行きます。いやいや、そうじゃなくて、大事なのは、争いごとってワクワクかドキドキかは人それぞれだけど、否応なしに興味は惹かれるよねってことです。この事実です。SNSでもよくストリートの乱痴気動画がTLに流れてきて、ついつい見てしまったりしませんか? まずこの事実を確認しておいて次です。
もう一つ確認しておきたいのは、人間って手を使う生き物だよねってことです。唐突ですが、これは大事ですよ。『パンチアウト!!』は手を使うボクシングが題材のゲームですからね! はい、ということで嫌でも見ていきますよ! ところで、哲学でも人間の定義付けって難題だったりするんです。
「人間は考えるから人間なのだ」
「人間は笑うから人間なのだ」
「人間は遊ぶから人間なのだ」
「人間は理性があるから人間なのだ」
「人間は道具を使うから人間なのだ」
こんな感じで色々あります。どれも間違いではないんだろうけど、これ!!ってのが中々見つからないんだと思います。一つとは言えないけど、一つでも欠けると人間としてどうなの?って特徴です。
なぜって、全部人間の本質だからですよね。当たり前です。が、当たり前のことを真剣に考え直してみるのも哲学なので無粋なツッコミはやめておきましょう。で、そんな人間の定義付けの中で「人間は手を使うから人間なのだ」ってのもあるんです。あるんですっていうか、自分で考えてみてもそうですよね。
確かにオランウータンやチンパンジーも手を使うけど、人間のそれはもっと繊細で器用そうです。五本指がうねうね動いてそれはもう色んなことができますよね。この指の長さと幼児の言語発達が関連している、なんて記事を以前見た記憶もあります。
その指を握ると”拳”になるのですが、この拳。イライラ頭にくることがあったり、ハラハラ緊張したときとか、ブリブリ気張ったときとか(本当すいません)衝動的に強く握ったりしますよね? 「手に汗握る」とも言いますし、シンガーソングライターの中島みゆきさんも名曲『ファイト!』の中で”悔しさを握りしめすぎた こぶしの中 爪が突き刺さる”と書かれています。
衝動的と本能的はほぼ同義なので、どうやら人間は本能的に拳を握る生き物だってことが言えそうです。意識せずに拳を握ることは誰にでも経験あると思います。更に言うとイライラがマックスに達したときに衝動的に拳で何がしかに攻撃することってあるよねってことなんです。
机、黒板、デスク、ホワイトボード、窓ガラス、高架橋の下のコンクリの柱、昨日まで友達だと思っていたアイツ・・・などなど、人が衝動的に拳で殴っているモノのイメージ。青春の匂いがぷんぷんしますが、このことは半分冗談で半分本当です。
なぜならば、青春時代は本能的に何がしかをぶん殴って傷つけても成人ほど社会的制裁を受けない、と思われるからです。かなり微妙なこと言ってますけど、今はズンズン行きます。
普通に生活している成人であれば社会にもまれて理性も知性も身に付くので、本能のまま衝動に駆られて何がしかを殴ることは無くなっていくのが通常です。時々そうじゃない人もいらっしゃいますが、僕は関わりたくないなって思います。
ですが、どうやら人間は本能的に拳を握って、その拳を感情のままに何かを傷つける行動に使うことがある生き物だねってことは無理なく言う事ができそうです(なんてまわりくどいんだ!)。
それでですね。このことを少し言い換えて・・・
本能にある攻撃的な性質を社会的な知性と理性で抑えて生活している
と言ってみたらどうですか? なんとなく乱痴気騒ぎや年末の格闘技番組、ボクシングを始めとする勝ち負けのあるスポーツに人間が熱狂する理由がうっすら見えてきた様な気がしませんか? 僕はキテマス。キテマス。きまくりやがってます。
ここでさっきの本に目を戻しますと、こんなことが書いてありました。
では、闘争を見る者は、そこに何を期待して喜ぶのだろうか。その答えは、ニセモノとして演じられる闘争のなかに、むしろ明瞭に見てとれる。ニセモノであるがゆえに、できるだけ観客の期待を満たすように演じられるし、観客の側も自分が巻き込まれる恐怖や、いけないものを見ているという後ろめたさがなく、安心して自らの欲望と期待を開陳できるからだ。引用:『殴り合いの文化史』2019年 樫永真佐夫著 左右社 p25.
ニセモノとして演じられる闘争ってのは、ルールの下に行われるスポーツによる闘争とか、ゲームによる闘争とかの、要するに野放しに身体を傷付け合うことじゃないっていう意味でのニセモノですよ。
ここで注目したいのは後段の方なんですけど、ニセモノだから巻き込まれる心配もなく、道徳的な背徳感もなく、安心して欲望と期待を解放して争いを楽しめる
ってことですが、もうクドイのでわかりやすくハッキリ言い換えますけど・・・
スポーツやゲームによる争いは普段抑圧している攻撃的な本質やゲスい欲望も願望もあけすけにさらけ出してヒャッハーできる
ってことですよ。これ、観戦してる側はもちろん、ルールの下であればプレイヤーも一応同じです。
もうここまで来れば、なぜ人がスポーツや格闘技に熱狂するのか、なぜバトル漫画にヒット作が多いのか、なぜジャッキー映画は最高なのか、なんてことの深い所に何があるのか見えてきますよね。
プロレスや総合格闘技などの興行はもちろん、映画やゲームに暴力というか、闘争や乱痴気は欠かせない要素の一つです。争いごとは完全に文化的なエンターテイメントとして利用されています。
これ以上は長くなるので割愛しますが、ボクシングの歴史や闘争の歴史を辿ると、生殖行動や食料及び異性の奪い合いなど、元来生き物としての人間に備わっている本能的な行動と闘争が深く結びついていることが見えてくるので、なぜ人々が小さく言えば”殴り合い”大きく言えば”争いごと”に熱くなるのか、より鮮明になります。ご興味のある方は上記の本や巻末の参考文献を追っかけてみてください。
さてさて、これで最初の疑問が解けたので、もう一度振り返ってみます。
Q:拳で殴る攻撃行動が人間社会で文化的に発展した要因には、人を夢中にさせる何かがそこにあんじゃね?
これに一言で答えるならば・・・
A:人間の抑圧した本質的な攻撃衝動や欲望の解放がそこにある
というわけだったんですね。これは確かに夢中になるわけだわ・・・
『天空の城ラピュタ』でもケンカを見てる観客がたまらず参戦するってシーンがありますよね。あれだって、相手が海賊だから町を守ろうと参戦してるわけじゃなく、乱痴気そのものを楽しみたくて、自分の腕っぷしを試したくて参戦してるわけです。実に衝動的な行動で野蛮ですよね。
『アンパンマン』が大好きな二歳半の僕の子供も「アンパチっ!」とか言いながらしっかり拳を握って妻の尻をなでる僕を殴ってきます。マジです。二歳半の幼児ですら、鉄拳制裁アンパンチにどこかしらカタルシスを感じているように見えます。
と、こんな風に例をあげてもいよいよキリがないので締めます。ここで辿り着いた結論をもう一度確認すると・・・
安全な”ボクシング”の疑似体験が可能なFC版『パンチアウト!!』は、人間の抑圧した本質的な攻撃衝動や欲望の解放ができるから面白い
となりました。う~む。堅い、堅すぎるぜ・・・
シンプルイズベスト! 自キャラが動かせないことが『パンチアウト!!』の肝だった
というわけで『マイクタイソン・パンチアウト!!』に戻ります。ここまでで、一先ずFC版『パンチアウト!!』の面白さの本質はわかったので、他の特徴は何かないかと考えてみます。これね。やっぱり他のボクシングゲームと決定的に違うのは・・・
相手の動きに対応する(だけでいい)ってことだと僕はズバッと判断します。
いまさら何を言ってるんじゃ! って思われるかもしれないのですが、ここまででわかった面白さの本質。これって正直な話、どんなゲームにも当てはまる定義なんですよね。え? 気づいていましたか? すいません。
抑圧した攻撃性や欲望の解放って、ほとんどのボクシングゲームひいては対戦型ゲームに当てはまる本質なので、ゲームの面白さの本質でもあるんです。正直に言って僕自身『パンチアウト!!』を掘り下げることで、こんなに大事なことがわかってしまう所までいくとは思っていませんでした。まじかよタイソン!
実はこのゲームの本質について、最初の方でリンクを貼った任天堂の公式サイトの中でもかなり近しいことが議論されています。ていうか、僕のややこしく長い文章を読んでくださって、尚且つなんとなくでも頷いてくださったあなたなら、「なんだ。こっちの方が一言で超わかりやすく話してるやんけ」って、僕にイラつくと思うので是非読んでみてください。そして許してください。
社長が訊く『PUNCH-OUT!!』 (nintendo.co.jp)
だけど本質はあくまでも本質なので他のゲームと比べた時の『マイクタイソン・パンチアウト』の面白さの特徴って何よってことを確認しないとモヤモヤしまくりです。大丈夫です。ここは超シンプルです。正にシンプルイズベスト。
手前味噌ですが、本記事の冒頭で書いた「かわして打つべし、よけて打つべし、決めろカウンター、唸れ必殺アッパーカット!」 に集約出来ていると思います。
要するにやることが単純なんですよね。敵キャラの動きに合わせてよけたりかわしたりしてパンチを打ち込んでいくだけですから。んで、これが何故だか超楽しいってわけです。この何故の理由の本質は先ほど見た通りでした。
ここで考えたいのは他のゲームとの違いなんですけど、仮にさっきわかった面白さの本質を最近の格ゲー『ストリートファイターⅤ』とかに照らしてみるとわかりやすいんです。
安全な”格闘”の疑似体験が可能な『ストリートファイターⅤ』は、人間の抑圧した本質的な攻撃衝動や欲望の解放ができるから面白い
いかがですか? モヤっとしますよね。そうなんです。このモヤモヤの正体をちゃんと見ておかないと、ここまでが机上の空論になっちゃいます。
この上記命題っていうか、辿り着いた一つの答えを実践的に考えると、抑圧した本質的な攻撃衝動や欲望の解放が出来るほど上手くなるまで、どんだけ時間がかかると思ってんだよ!!って話ですよね。これがモヤモヤの正体です。
要するにゲームの面白さの本質を享受するには、根本的にそのゲームを楽しめるレベルまで操作できないと話にならないんです。これは重大な事実だ! ガーン!!
逆説的にこのことから最近の格ゲー不人気や上達する前に「こんなのつまんねっ」て投げ出す人が少なからずいるのも理解できますよね。かくいう僕自身、こんな風に投げ出したゲームは数知れずあります。
ここで『パンチアウト!!』に戻ります。どうでしょう? さっきより解像度があがりましたよね。もう一度言います。
「かわして打つべし、よけて打つべし、決めろカウンター、唸れ必殺アッパーカット!」
そうなんです。『パンチアウト!!』はやることが単純化されたボクシングゲームなんです。他のボクシングゲームや格ゲーは自キャラを動かす必要があるのに対して、『パンチアウト!!』はキャラが固定されいて動けない。っていうか動かす必要がないですよね。これが大事。これで何が起こるかって言うと・・・
余計なことを考える必要がない
これです。このことでシンプルに相手のパンチをかわすことや相手の挙動を捉えることに集中することが可能になっているんですね。あーすごい! これはすごい。
確かに『ストリートファイターⅤ』を始めとする他の対戦ゲームでも、相手の動きを捉えて捌く行動をとることは大切ですし、基本的な戦略ですが他にも気を配っておかなければいけない部分が視覚的にも心理的にもありすぎて、煩雑なんです。
もちろん、この煩雑さが格ゲーをより奥深いものにして、eスポーツという「競技」として認められるまでにたらしめたことは言うまでもないことですが、言っちゃいました。
その煩雑さを敢えて引くことによってただ愚直なまでに面白さに特化したボクシングゲームが『パンチアウト!!』なのだと、もう大きな声で言っちゃいます。
煩雑さを敢えて引くことによってただ愚直なまでに面白さに特化したボクシングゲームが『パンチアウト!!』なのだ
はい、二回言いました。ありがとうございました。
マイク・タイソンと任天堂! 隠された”真相”は大人の理由だった
『パンチアウト!!』の面白さについては概ね謎が解けたのでマイク・タイソンについて少し触れてみたいと思います。
そもそもマイク・タイソンを任天堂のような善きイメージの会社がゲームに採用するってインパクト強いと思いませんか? だってタイソンですよ。僕はいまだにおっかねえイメージが強いんですけど、みなさんはどうでしょう。
タイソンのイメージって、1987年当時もあまり良いイメージで受け入れられている存在ではなかったと思うんですよね。だからこそ『マイクタイソン・パンチアウト!!』って名前を冠しているのにラスボス扱いにしたんだと思われます。めちゃくちゃ強い人らしいっていう認識は当時小学生の僕にもありました。
冒頭にも触れた話題なのですが、FC版『パンチアウト!!』には景品版と一般販売版の二つがありました。ちょっともう一度これを確認してください。
景品版:タイソン出ない方
1987年6月14日発売のマリオの『ゴルフUSコース』の同年8月31日まで行われたプレイヤー参加型イベントの景品として発送された。
一般販売版:タイソン出る方
1987年11月21日発売
8月31日に応募を締め切ったイベントで景品をプレゼントされた人たちがFC版『パンチアウト!!』を実際にプレイしたのって確実に9月に入ってからですよね。そこから三ヵ月も経たない内に『マイクタイソン・パンチアウト!!』は一般販売されています。
これを見れば最初からタイソン出る方の一般販売は決まっていて、既に制作されていたと普通に推測しますよね。そりゃあ三ヵ月もないわけですから、スタートからタイソンとライセンス契約して、ゲーム用にキャラクターを造形して、広告考えて、CM撮って(しかも本人出演)って三ヵ月じゃあもうドタバタ。不可能だと思います。
それなのに任天堂の公式サイトでは景品版をいざ配ったらば”欲しいという声が沢山寄せられたから一年を待たずして販売することになった”とされています。
んなわきゃない!
と天下の任天堂にツッコミを入れておいてですね・・・
こちらをご覧ください。
なんとタイソンの自伝です。今回『マイクタイソン・パンチアウト!!』をやると決めていたので、あのタイソンが文章を書くのか! という驚きと共に、読まさせて頂くしかないかと・・・ブツブツ言いながらAmazonでスワイプ買いしましたところ・・・
めちゃくちゃ分厚い・・・
いや、辞書かよっ!!
叫びましたよね。Amazonの包装をバリっと開けて、取り出して、中見た瞬間に、ハッキリと。んで中をおそるおそる開くとですね、冒頭にグラビアが数ページ載っているので、パラっとめくってちらっと見たら・・・
ひええええええ・・・・・
いや、こわいこわいこわいこわい!!
しかもさ『13歳の俺』ってのもどうなの? これ訳し方に問題ない? 面白いけど。こんな13歳がこの世にいたんですか・・・ マジで普通に怖い。
気になる中身の方なのですが、幼少期から現在までのエピソードを詳細に語っていく一人称『俺』スタイルの大長編です。邪推ですが、文章の雰囲気からして、タイソン自身が語る俺様エピソードを口述筆記して、時系列で並べたんじゃないかと思われます。確信に近いです。
他人に語るように紡がれているせいか自慢話っぽい雰囲気が多分に漂っていますが、タイソンってこんなに饒舌な人なのか、と人柄が垣間見えて面白いです。試合に負けて泣いたり、大事にしていた鳩を殺されてブチ切れたりと意外なエピソードも出てきて、自伝ならではの読み応えはあります。
表面的に読むと暴力や性的な話ばかりでウンザリするのですが、全体に漂う哀愁があるのも事実で、タイソン自身が「俺は他の奴とは違うんだ」と感じて生きていることも読み取れました。親の愛に欠けて育ったことから、タイソンはどうしても寂しいのだろうさ。タイソン、おめえってやつあ・・・
でね。見つけました! この本の中に『パンチアウト!!』に関するタイソンの言及を発見したので以下に引用します。
試合後、任天堂から、『マイクタイソン・パンチアウト!!』というファミリーコンピュータのボクシング・ゲームの肖像権料として七十五万ドルの前金を受け取った。ゲーム小僧じゃなかったから、そんなに興奮はしなかった。リングで戦えればそれでよかった。ボクシング以外は門外漢だ。
引用:『真相 マイク・タイソン自伝』2014年 マイク・タイソン著 ダイヤモンド社 p172.
金どっさりもらっておいて門外漢はないでしょっ! とだけツッコんでおいて、ここで注目したいのは『試合後』ってところです。この試合はいつなのかと言うと1987年の3月7日、ジェイムズ・スミス戦だと本の中で語られています。この事実です。
1987年3月7日の試合後にタイソンが肖像権料を受け取ったということは、その試合以前にライセンス契約をしていたってことなので、1987年6月14日発売のマリオの『ゴルフUSコース』より3か月以上も前に任天堂はタイソンと契約していたことがわかります。
キタコレ!!
この事実から、景品版のタイソン出ない方を発送する以前から、とっくに任天堂はタイソンと契約していて、タイソン出る方も作っていたってことが判明しました。そりゃあそうですよね。「欲しいという声がたくさん寄せられたから」って、三ヵ月で慌ててタイソンくっつけてなんて、無理ですもんね。
セガの『ロッキー』の発売日は1987年の4月ですから、その制作期間を鑑みても任天堂がタイソンと契約する以前にセガは『ロッキー』の使用権を得ていたはずです。
このことから、任天堂がFC版『パンチアウト!!』を制作するにあたって『あしたのジョー』や『ロッキー』をあくまでも脚色に利用して、実在のチャンピオンで知名度もロッキー・バルボアに劣らず高かったマイク・タイソンを『パンチアウト!!』に迎え入れたのは必然だったんじゃないか? と下世話な僕は思ったわけです。みなさんはどう思われますか?
しかし、なにゆえに現在の任天堂はそんなマイク・タイソンをなかったことにするのでしょうか・・・
ってまあ、その辺は現在のタイソンを見てればわかりきったことなので、これ以上はやめておきます。任天堂の関係者の皆様すいません。僕はビビってます。
だけど、任天堂は当時からタイソンの素行を慮ってハナからゲームキャラにしたタイソンを取ったり外したり出来るようにバージョン違いのものを二つ作っておいたんじゃないかしら・・・。しつこいですね。もうやめておきます!
いやしかし、タイソンの自伝にもう一回話を戻しますけど、この本に出てくるのは、
犯罪・暴力・女・セックス・ドラッグ!
もうクドイってくらいこれらが交互に出てくる出てくる、出てきまくる。もう笑えないくらいに。正に人間の抑圧した本質的な攻撃衝動や欲望の解放をしてるのがタイソンの人生なんです。タイソンはボクシングのイデアです。闘争の化身が服着て歩いてるんだとわかりました。おまわりさん、この人です。
つまりこういうことだったのだ・・・
人間の持つ攻撃的な本質やゲスい欲望も願望もあけすけにさらけ出してヒャッハーしてたのはマイク・タイソン
そりゃあ任天堂も手を引くわけだよ・・・
Wii版の『パンチアウト!!』も傑作です! 未プレイの方は是非!!
最後にWii版について感じたことをしたためて終わりにしたいと思います。
一言で言うとおススメです。僕は断然支持します。この作品、本当にFC版『パンチアウト!!』のブラッシュアップに成功してると思います。ボクシングゲームの面白さは本稿で語りつくしたので、既に保証されています。心配しないでください。
こういったリメイクものって、古参のファンがプレイしたときの思い出補正に耐えられるかどうかで一般の評価が分かれますが、あまりそっちに目配せしすぎてもただのファンゲームになっちゃう。だもんで何か新しい要素を! ってなるんだと思いますが、その新しい要素も〇!
対戦が可能になったマルチプレイの部分を任天堂の田邊賢輔さんは推していらっしゃいますが、社長が訊く『PUNCH-OUT!!』 (nintendo.co.jp) 僕がみなさんに伝えておきたいのはそこじゃない。
このWii版、とっても素晴らしい点はもうこれ! 間違いなく!
ヌンチャクコントローラー!!
これです。どういうことかと言いますと、ヌンチャクコントローラーは右手と左手別々にコントローラーを握って、シャドーボクシングの様にプレイするんです。
右手を振れば、リトル・マックが右パンチを繰り出す。
左手を振れば、リトル・マックが左パンチを繰り出す。
このことで、ボクシングの疑似体験が一層リアルに近づいています。
そもそも『パンチアウト!!』の面白さがボクシングの疑似体験にあることは本稿で皆さんと確認した通りなのですが、もうね、この点が見事にスムースに体感できるようになっています。これだけでも体験して欲しい! マジで楽しいから!!
テレビの前に立って、両手にコントローラーを握って、Tシャツ姿で闘ってください。パンチをかわしたとき、パンチを連打してるとき、ダウンを奪ったとき、KO勝ちしたとき、身体の内側から得も言われぬ快感が立ち上がってきます。これは抵抗不能。
『パンチアウト!!』の魅力の一つ、個性的な各敵キャラの設定も新たな肉付けが施されていてこれも面白い! 古参ファンは”こいつはこういうやつだったのか”って感心できたり、笑えたりと見ていて飽きません。やっぱり任天堂はすげーやって感服せざるを得ない。
サーキットもマイナーからメジャーへと上がっていくに連れて、ちゃんと会場が変わっていくのも旧作にはなかった点。雰囲気が出ていてナイスです!
一応ダメだったところも言っておくと、あのランニングの名シーンが短い。一瞬で終わっちゃうんです。これは残念。ゲームのテンポを重視したんだと思うのですが、僕はもうちょっと見たかったかな・・・
それと、みなさんは気にならないかもしれないのですが、個人的にはゲーム音楽のボリュームが効果音の対比で小さい気がしました。 せっかくアレンジされたかっこいい音楽なのによく聞こえないから、試合中はあまりプレイのテンションに貢献できてないよ。最近のストリートファイターシリーズくらい音がドーンと来る方が僕は好き!
最後にもう一つ、これはシリーズ全体を通してのことなのですが、これを一言つっついておきまして今回は終わりにしたいと思います。
えっと・・・
リトル・マックってキャラが定まってないですね
ずーーーっとブレブレな気がします。
元々、個性なんて必要のないキャラだったのに、ケンカ好きの17才なんて文字通りパンチのある設定をぶち込んだから扱いづらくなったんでしょうか。
現在のリトル・マックはフレッシュな好青年って感じでケンカ好きには見えない。ギガマックなんてブランカかハリマオって感じ。『スーパーパンチアウト!!』の金髪に至っては別人ですか、そうですか・・・
初期からケンカ好きには見えないよね
ていうかこの二人・・・
この二人に見えてきた・・・
結論
リトル・マックは青山くん
しかしながら、アレンジされたマイナーサーキットのBGMをサウンドテストで聴いたときは涙が込み上げました。リトル・マックは引退しちゃったけど、またいつか新作を頼むよ任天堂!! 未プレイの方はFC版と合わせてこちらも是非プレイしてくださいね!
はい、というわけで今回も長くなりましたが・・・
『マイクタイソン・パンチアウト!!』はボクシングゲームの礎を築いた大傑作だと思います。まごうことなき再神作です!
是非もう一度プレイしてください!!
ちなみにですが、『パンチアウト!!』と合わせて映画『ロッキー』シリーズと『クリード』も合わせて観ると更に盛り上がるのでおススメですよ!
それでは、また次回お会いしましょう!
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