モジゃもんときどきシアワセ。

破れた夢は数知れず、ゲーム大好きロスジェネ世代のはみだしもんです。ときどきシアワセならいいじゃないさ!

ゲーム再神作!vol.3 異国冒険譚!!アルゴスの戦士で英雄になれ!!

アルゴスの戦士バナー

ファミコン横スクロールアクションゲームの極北‼

唸れ!必殺ディスカーマー!!

 テクモファミコン第4弾は痛快アクロバットアクション『アルゴスの戦士』のファミコン版だ~っ!!

 ファミコンアルゴスの戦士 はちゃめちゃ大進撃』は業務用『アルゴスの戦士』から大きくパワ~アップしているゾっ!

 戦士の武器ディスカーマーを駆使して獣王ライガーをぶったおせ‼ 今回はテクモの名作『アルゴスの戦士 』を激烈超特集じゃ~~い!!どらららっ!

 

アルゴスの戦士 タイトル画面←くぅ~っシンプルでシブいタイトル画面だぜっ!!あれ?サブタイトルはどこへ?

 

タイトル画面にBGMは無し。孤独の戦いに向かう戦士に緊張感がはしるっ! 

 

 

 

でたあっ!綺麗な夕陽がまぶしいっ!!夕陽

 

 

ファミコンアルゴスの戦士』はストーリーもロールプレイングゲームのように重厚になったぜ‼ 聖地アルゴールを救うためにアルゴスの地より戦士は甦ったのだ!

 

 

モジゃもん驚き2

美麗なグラフィックが冒険を盛り上げる!!

 業務用に劣らない美しいゲーム画面がファミコンにもついに登場!!ここまできたか~っ!!

ライガーの城

 空に浮かぶ獣王の城がかっこいい! 天空の島はこの他にも登場するゾっ!

 

 

 

 

 

 

ベルザー戦

 

↓こんなに巨大な敵キャラも登場!

エプオルコン


 やっぱりテクモの移植はすごい! 業務用『アルゴスの戦士』に引けを取らないこのグラフィック! しかも一本道だったステージが文字通り山あり谷ありになったのだ‼

 

ゲルロゼオ←渓谷を滑車で渡るなんて、まさに大冒険!

 

 

 

 

 

 

 

大ボスドラゴの部屋は床に龍が!!
ドラゴの部屋

 

 

モジゃもん興奮!

探せインドラ! アイテムを使い分けてエンディングを目指そう!!

 アルゴスの戦士』にはさまざまなアイテムが出てくるぞっ!!

 

仙人のくさりがまで天まで上れ! 仙人のように‼

仙人のくさりがま

 

風の滑車で谷を渡れ! 風のように‼

風の滑車

 

炎のボウガンでロープを張れ! 猪木のように‼

猪木のボウガン

いくぞーっ! ダァァーーーーーーっしゃ!!

 
 

戦士の紋章←その他にも戦士の紋章があればインドラから体力回復アイテムをもらえるZEっ!

  

 

 

ロールプレイングゲームのような探検要素満載のファミコンアルゴスの戦士』には十種類ものアイテムが出てくるのだっ!! 体力回復やパワーアップアイテムはもちろん、いままでのアクションゲームにはなかった移動アイテムや敵の城へ行くためのアイテムも出てくるぞ!!

 

 

モジゃもん緊張!

倒せ獣人軍団!RPG顔負けの敵キャラが熱いっ!!

 太古の恐竜、巨大イモムシ、双頭の獣、園丁のロボット、巨大カタツムリ、そして獣神サンダーライガー!?

 

キナターノス

↑キナターノスが邪魔で進めないよ! 

 

巨大グモ←洞窟の奥には巨大グモがあぁっ‼

 

 

 

 

 

 

 

 

ひぇ、こんなところでモルゴリンが二匹っ!!
モルゴリン

 

ファンタジーといったら沢山のモンスターがでてくるものだよね!! ファミコンアルゴスの戦士』には様々なモンスターが登場するのだっ! 奴らの名前は獣人族! 片っ端からディスカーマーでなぎ倒して獣王ライガーを目指せっ!!

 

 

独断偏拳攻略法伝授‼

モジゃニコ


 

 こんにちは。モジゃもんです。ここからは僕が”アルゴスの戦士”であそぶときにやっている攻略法をお教えします。同じゲームで遊んでいるクラスの友だちの話、くらいの距離感で見てくれるとうれしいです。 

 

その1  

操作性の高いジャンプを駆使しようっ!!

 かわす、よける、踏みつける、移動の暇つぶしとアルゴスはジャンプゲームです!

 

ぴょーんぴょーんときて、ザシュッ!!

モルゴリン頭上


 

ひゃっほーい! ひゃっほーい!!

ヒャッハー!

あ・・・。

モジゃニコ


 

 『アルゴスの戦士』の面白さは軽快なジャンプアクションによるところがかなりあります。ジャンプ中に機動修正が可能で、これを上手に使うことが重要です。

 

その2

稼げるポイントを把握して経験値稼ぎをしようっ!!

腕力、胸力とステータスがあるけれど意識するのはポイントだけ !

 

ガラガンダ連峰のここ!

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ロルセニア渓谷のこの辺!

経験値稼ぎ2

 

天空の城ラピュタのここ!

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モジゃキラ


 

経験値によるレベルアップを取り入れている本作では経験値稼ぎが必須です。僕が使うポイントは3つ。だから3回だけ少し頑張る。この3つの場所だけでクリアするための経験値稼ぎは可能です。ちなみに全くもって謎ですが4095ポイントで経験値は止まります。逆に言えばこれだけ稼げばクリア確定。

 

あるあるゴスゴスの戦死

死してなおも輝く

 

 

その3

集中して一発消しをしようっ!!

 とにかく冷静に!! このゲームは敵がわんさかわんさか湧いてきます。それを最小限の動きで打つことが体力温存につながるので重要です。

 

叩け獣王ライガー! ゴリ押せディスカーマー!

獣王ライガー

下半身が石のように固まってるのは一体・・・


 

以上です。スタジオさ~ん!!

 

アルゴスの戦士 徒然話
 では、ここからは私、モジゃもんがじっくり考えて決めた懐かしいゲームをたっぷり遊んで評論させていただいて、再び神作となるサイシンサクか、思い出補正だけが拠り所の懐古ゲームかを考える「ゲーム再神作徒然話」です。

 今回遊んだのはFC版アルゴスの戦士 はちゃめちゃ大進撃』(以下アルゴスの戦士です。1986年5月にAC版が稼働、テクモ株式会社から発表された横スクロールアクションゲームですね。同社は2010年にコーエーと合併して、現在は株式会社コーエーテクモゲームスとなっています。テクモは『忍者龍剣伝』を筆頭に『キャプテン翼』や、前々回に紹介した『激闘プロレス‼闘魂伝説』など心に残る名作の数々を80年代に発表して、ファミコン業界に一家を成したメーカーです。

 

 FC版『アルゴスの戦士』が発売されたのはAC版が稼働された翌年の1987年4月17日になります。テクモとしてのファミコンソフトは本作で『マイティボンジャック』『ソロモンの鍵』『スーパースターフォース』に次ぐ第四作目。1987年のファミコンソフトは『ドラクエ2』『熱血硬派くにおくん』『ロックマン』と後々に半ば伝説化しているゲームがかなりの数で発表されていて、挙げていくと本当にキリがありません。

 

 面白いのは、全118本もリリースされている超激戦のこの年に発表された『アルゴスの戦士』が、子供たちの所有率も高く、ファミコンボーイにとって記憶に残る一作となっていることです。僕の記憶だとクラスの友だちも大体持ってましたし、僕らの世代だと知らない人の方が当時は確実に少数派でした。

 

 ところが、上に挙げた『ドラクエ』や『ロックマン』などをフェイバリットに挙げる人はいても「俺のファミコンベストはアルゴスだぜ!」って人に会ったことはないんですね。だけど記憶にはしっかりと残ってる。超好きなわけじゃないけど記憶に刻まれた何かがある、みたいな感じでしょうか。

 

 今回『アルゴスの戦士』をやろうと決めて色々調べてみたのですが、非常に残念なことにFC版『アルゴスの戦士』を制作された当時のスタッフが全く分かりませんでした。これ、ただシンプルに僕の勉強不足なだけの可能性が高いので、その辺のことをご存じの方は情報を寄せて頂けるとありがたいです。唯一僕がわかったのはFC版『アルゴスの戦士』の音楽を担当された方が蓮谷通治さんだったということでした。

 くり返しになりますが1986年5月にAC版が世に出て、翌年の7月にはもう本作が出ています。この間の具体的な制作期間はわかりませんが、窺えることは当時のテクモも御多分に洩れずタイトなスケジュールの中でスタッフを走らせていたのかな、ということです。ファミコンバブルに鞭を打たれる制作陣の徹夜の日々と時代の活気が目に浮かぶようでワクワクします。


アルゴスの戦士』は2002年にPS2で3D化された続編が出ていて、これのバージョン違いのようなモノが任天堂wiiから2008年に出ています。FC版発売の翌年の1988年にはサリオというテクモの子会社からアルゴスの十字剣』というAC版を努力して移植したような作品がセガのマークⅢで出ています。この表題に当時僕も非常に惹かれまして、剣でえいや~っと闘うゲームかと思ったら勘違いだったという、苦い思い出があります。

 

 最近ではファン待望だったであろうAC版の完全移植作品が、PS4ニンテンドースイッチダウンロードコンテンツとして発表されています。

 PS2の『アルゴスの戦士』は発表当時に僕もがっつり遊びました。ハードの進化に伴ってアルゴスの世界観が見事に具現化されたと当時は思いましたし、隠しダンジョンであの曲がかかった時は鳥肌も立ちました。ビジュアルもアクションも音楽もさすがテクモって感じだったんですが・・・今回色々と調べてみたら、まー言いたいことが出てくる出てくる、FC版の良さがわかればわかるほどこれはどうなの? みたいなことになってしまいました。

  とりあえずですね、魔人イカロスの本名がアリストテレスってのに「おいっ!」 とだけツッコんでおいて、ここは先に進みます。

 

 さて、本題のFC版『アルゴスの戦士』なのですが、この作品には現在もネット上や居酒屋ファミコン談義でしばしば話題に上がる巨大な謎があります。それはずばり、副題の『はちゃめちゃ大進撃』とはなんぞや、ということです。これね。これなんですが、今回、正直ばっちり謎が解けちゃいました。少なくとも僕の中ではスッキリと気持ちよく溜飲が下がりました。

 

 というわけで、周辺話はそろそろ切り上げてとっとと始めたいと思います。『アルゴスの戦士』は僕も思い入れがありますし、今でもファンが一定数いる作品なので再び自己中心的使命感に火をつけて掘り下げてみました。今回も長編となりますが、このゲームの魅力を次代に繋げて、新たなアルゴスの新作をコーエーテクモに作ってもらうためにも気合い入れて行ってみましょう! それではレッツゴー!!

 

FC版『アルゴスの戦士』はプレイヤーが救世主になる異国冒険ファンタジーになっている
 1986年といえば夏に『天空の城ラピュタ』が公開された年で、僕は兄と夏休みに映画館に行ってジャッキーチェンの『サンダーアーム』を観るか『ラピュタ』を観るかで揉めた記憶が強く残っています。結果は兄の言う通り『ラピュタ』を観て本当に良かったんですけどね。この年に『アルゴスの戦士』はAC版がFC版に先んじて稼働されているのですが、当時の僕は知りませんでした何年か後に遊ぶ機会があって、やってみたらFC版と全く違うことに驚いたのを覚えています。

 

 FC版『アルゴスの戦士』はパッケージのイラストがポップで子供心をくすぐる魅力があったんです。今では考えられないことですが僕はこのソフトをジャケ買いしました。この頃はイトーヨーカドーや忠実屋などのファミコン売り場でガラスケースに並べられたファミコンソフトを見て、パッケージのイラストでソフトを選ぶ情弱購買層が一定数いたのだと思われます。僕もテクモの宣伝戦略に完全にのせられた口です。

 

このキャッチーな箱絵に惹かれました。

アルゴスの戦士 パッケージ

 

 先ず説明書を見てみると物語風のプロローグがゲームの導入として書いてあります。これアルゴスの戦士』を紐解く上で大変に重要なので以下に引用します。

 

 プロローグ

 それは、ある日突然訪れた。かつて、伝説の五神インドラが繁栄させたといわれる、聖地アルゴールの空を覆いつくすように、空飛ぶ城、獣王ライガーの牙城が出現したのだ。天空から舞い降りた獣人族は残虐の限りを尽し、一夜にして悪の帝国を築いた。しかもライガーは、五神インドラの創り出した平和の象徴である「平和の扉」を奪い去った。平和の望みは扉と共に消え、人々は笑顔を失い、古くから伝わる予言書の一節を唱え続けるだけであった。「大地が獣に覆われし時、アルゴスの地より戦士甦えりてこれを救わん」人々の悲痛な祈りは山々に響き渡り、遠くアルゴスの地にこだました。戦士は甦える。闘神インドラの力を借りよ。ライガーを倒し、再び平和の扉を開け。獣王は天空にあり!

 

 はい、超カッコいいプロローグです。ファンタジックでジブリスティック(造語です)で燃えてきますよね。注目して頂きたいのは下線部の一節なのですが、プロローグ全体を要約すると「インドラが繁栄させたアルゴールが空に突然現れた獣王ライガーたちに乗っ取られました。だけど遠くのアルゴスから戦士がきっと助けに来るよ」って話ですよね。そして太字で強調した部分だけ唐突にこちらに話しかけてきてます。

 

 肝心なのはこれが救世主物語だということですよね。じゃあ救世主って何ですかってことを理解しておかないといけないと思うんですが、つまりこういうことだと思います。

 救世主物語とは・・・

 

 自らの力では解決し得ない問題を抱えた、人の集まりとしての文化や社会を、別の文化や社会から現れた何者かが救済する話

 

 ってことじゃないでしょうか。もちろん原点は宗教にあるのですが、文化作品で代表的なところだと漫画の北斗の拳や映画の『シェーン』なんかがそうです。ジャック・ニコルソンカッコーの巣の上でとかキアヌ・リーヴスマトリックスも救世主物語ですよね。この様式、賢明な方ならお気づきかと思うのですがゲームと非常に相性がいいんです。

 

 極端な話、先ほど定義させて頂いた救世主物語の様式にある「別の文化から現れた何者か」という部分、ゲームにおいてはプレイヤーが必ず当てはまるんですね。この辺をストーリーに非常に上手く絡めてる作品の最高傑作は『ファイナルファンタジーX』だと僕なんかは思うのですが、皆さんはどうでしょうとか言いつつですね、ここで『アルゴスの戦士』のプロローグに戻ってみますと、最後の文がきっちり締まります。

 

 闘神インドラの力を借りよ。ライガーを倒し、再び平和の扉を開け。獣王は天空にあり!

 

 これ、つまりアルゴスの戦士とはあなたですってことで、幕が上がるわけなんですね。これでゲーム内の主人公の素性が一切描かれていない理由がわかる気がしますよね。ここで主人公の名前やどのような人物かという本質や実存の部分を説明してしまうとプレイヤーの没入感が目減りしてしまうんです。逆に言うと、このゲームの異様な没入感というか全体に漂う孤独感はこの設定に起因してる部分がかなりあると思われます。

 

  ちなみに「アルゴール 」と「アルゴス」は実在する地名なのですが、プロローグにある「遠くアルゴスの地」をちょっと検証してみました。

 先ずアルゴールはフランスの端っこの方にある人口1000に満たない小都市です。一方アルゴスギリシャペロポネソス半島にある海に近い都市です。さて、このアルゴスからアルゴールへ向けて救済に行こう!ってことで、旅に出てみるとどれくらいかかるのかグーグルマップで調べてみると・・・

 

アルゴールへGO!

 めっさ遠い!

 16日と20時間です。これだと聖地アルゴールに到着した時点である意味英雄です。遠く2,818キロも離れた土地に祈りを届けるアルゴールの民はかなりの祈祷集団であることがわかりました。ちょっと怖いです。

 

 さて、冗談はさておき。さらっと地名としての「アルゴス」について触れましたが、上述のプロローグの解釈を踏まえた上で、次はアルゴスの戦士』における「アルゴス」とは何かについてもう少し考えてみたいと思います。

  

 アルゴスの戦士』のルーツはギリシャ神話というわけではない

 実は先述の都市アルゴス以外にも「アルゴス」という名前がつくものはいくつかあるんですね。それらを一つ一つ見てみましょう。ちなみに「アルゴス」とはギリシャ語で「輝き」や「速さ」なんかを指す言葉らしいです。

 

アルゴスエントリー№1 船大工アルゴス

アルゴス」ときたら『アルゴスの戦士』以外になにがあったっけ、と考えてみて、パッと思い浮かんだのが、映画アルゴ探検隊の大冒険』(1963年)でした。あの粘土細工のような怪物がストップモーションアニメでぎこちなく動く映像がトラウマみたいに脳裏に焼き付いていたのですが、今回『アルゴス』を求めて改めて観てみました。

 

 『アルゴ探検隊の大冒険』はギリシャ神話のエピソードを映画にしたものです。

あらすじを要約して紹介すると・・・

 

 父親を王に持つジェイソン(イアソン)という王子がよそ者に王である父親を殺され、国を追われたので、王国奪還をするために魔法のアイテム「金の羊の毛皮」を遠くの国コルキスに探しに行くことになります。ですが、あまりに遠いので大きい船と逞しい乗組員が必要になります。

 大きい船は船大工のアルゴスが作った船に決まり、乗組員は勇気あるヘラクレスを筆頭に逞しい男たちが集まります。この船はアルゴ号と名付けられ、乗組員はアルゴナウタイ(アルゴノーツ)と呼ばれ、みんなで船出します。

 途中、巨像のタロス怪鳥ハーピーとすったもんだしたり、動く岩に行く手をさえぎられてもデッカイおっさん型トリトンに救われたり、女神ヘラの御加護とかで何とかコルキスにたどり着きます。

 コルキス王は自国のアイテム「金の羊の毛皮」を盗まれると思い、ジェイソンたちとすったもんだします。アイテムを守るヒュドラと戦ったり、コルキス王が召喚した栽培マン骸骨剣士と戦ったりするもジェイソンはそれらを打ち負かして美女のメディアとお目当てのアイテムを手に入れて王国に意気揚々と帰りましたとさ。

 めでたしめでたし。

 

 これだけ書いておいてなんですが、この映画に出てくる船大工のアルゴスは間違いなく『アルゴスの戦士』とは関係ないでしょう。ゆかりの一つも見当たりません。

 

 ただし、この映画自体はまったく関係がないとは言いきれないんです。というのも、この映画の特撮を監督している巨匠レイ・ハリーハウゼンのキャラ造型と題材としてのギリシャ神話は『アルゴスの戦士』にとって大きな要素なんです。この辺の絡みは後ほどお話ししますね。

 

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 アルゴスエントリー№2 百眼の巨人アルゴス

  基本的にギリシャ神話というものはゼウスのプレイボーイっぷりが発端になっているものが多いのですが、このお話も同様です。むかしむかし目を百個も持ち、時間も空間も見通す力を持つアルゴスという巨人がおったそうな・・・

 

 ゼウスはヘラという奥さんがありながら、イオという美人さんと浮気をしていました。イオは女神ヘラに仕える巫女なので、ヘラは薄々ゼウスがイオに手を出していることに感づいていたんです。

 このままではヘラにばれて怒られちゃうと思ったゼウスはヘラを牝牛に変えちゃうんです。ところがヘラはその牝牛がイオだと気づいているのでゼウスに迫ります。

 ヘラ「あらあなた、その牝牛。いいわねえ。私に譲ってくださいな」

 こうなると立場の弱いゼウスは牝牛になったイオをヘラに連れていかれてしまいます。ため息が出るほど情けないですよね。 

 ぷんすか状態のヘラは牝牛のイオを四六時中見張るために番人を付けます。ここで抜擢されたのが時間も空間も見通す百眼のアルゴスだったのです。

 なんと、このアルゴスは百個の目が代り番こで眠るため、24時間死角がありません。

 ゼウス「きぃー!このままじゃイオが抱けないぞい!そうだ!抜け目のないヘルメスに頼もうかのう。ふぉっふぉっふぉ」

 ゼウスにアルゴスをなんとかしろと頼まれたヘルメスは羊飼いに化けて、笛を吹いたり眠くなる話を聞かせたりして百眼をすべて眠らせることに成功します。

 ほんでもってアルゴスの首をちょーんっ! もちろん牝牛のイオも解放ぉーっ!

 当然これに怒るのはヘラです。解放されたイオに虻をぶーんと送り込みます。虻に追われてイオは牛の姿のままエジプトに逃げ込んだそうです。モ~っ!

 めでたしめでたし。 

 

 後日談として殺されたアルゴスを不憫に思ったヘラは孔雀の羽にアルゴスの目を付けたそうです。だから孔雀の羽は人の目みたいな模様なんですね。

 エジプトに逃げたイオは結局ゼウスの子を産んで、その子がエジプト王になったそうです。

 

 はい。こんな支離滅裂な話『アルゴスの戦士』とは全く関係ないと言いたい、というか信じたいのですが、あろうことか2002年のPS2版『アルゴスの戦士』の主人公ゼーンはどうやらこのアルゴスをモチーフにしちゃってるっぽいんです。

 この百眼のアルゴス、なんとですね。

 

「神々の命を受け、上半身は人間の女で腰から下は蛇の形をしていた怪物エキドナやアルカディア地方を荒らした雄牛の怪物を退治するなど、多くの手柄をあげた」

アルゴス”出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』より 

 

 と、されているんです。もうこれゼーンじゃん!っていうね。これは残念ですよ。なにが残念かというと、少し結論の先出しになってしまうのですが、FC版の『アルゴスの戦士』の面白さは世界観を限定していないところにあるんです。世界観を捉えどころのないものにすることで全く新しい異世界の創造に成功しているところがすごいのに、PS2版のスタッフはこれに気づいていなかったのだと思います。ギリシャし過ぎです。

 

 でも大丈夫。この百眼のアルゴス、FC版『アルゴスの戦士』開発時には制作サイドもまだ意識していなかった、と思われます。なぜならば、それより遥かに強烈なモチーフが存在していたから、ってことなんですが・・・もうちょい後で紹介します。

 

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アルゴスエントリー№3 オデュッセウスの飼い犬、忠犬アルゴス

 いわずと知れた詩人ホメロスの一大叙事詩オデュッセイアの主人公、英雄オデュッセウスの旅の帰りを故郷の国イタカで20年も待っていたワンちゃんです。

 

 このワンちゃんのエピソード、かなりグッとくる美しい話なのですが、断言します。アルゴスの戦士』要素皆無です。フランダースの犬忠犬ハチ公ヨブ記を混ぜたようなグッドストーリーなのですが残念ながら関連性が見当たらないので割愛します。ご興味のある方は調べてみてください。

 

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アルゴスエントリー№4 ギリシャ古代都市アルゴス

 最後は先ほども少し紹介したギリシャ実在する都市のアルゴスです。このアルゴスの歴史は紀元前古代ギリシャの時代から続いていて、ほぼ現在の場所と同じ場所に存在していたということなのでロマンティックが止まりません。

 

 この都市を擁するアルゴリス地方はミュケナイ文明という青銅器の文明が栄えた土地で、アルゴスは重要な拠点だったそうです。だもんで自然とギリシャ神話にも舞台として登場しています。ここでついにアルゴスの戦士』を読み解く上で最重要と思われる作品の話をします。

 

 その作品とは、ずばりタイタンの戦い』(1981)です。この映画は先ほど紹介した『アルゴ探検隊の大冒険』(1963年)と同じく特撮界の巨匠レイ・ハリーハウゼンの手による作品で、氏によるストップモーションアニメが出てくる映画の最高傑作と言われています。この映画もギリシャ神話を題材にしているのですが、舞台としてアルゴスが登場してるんです。

 あらすじをざっくりと噛み砕いてお話すると・・・

 

 むかしむかし、アルゴスの国王アクリシオスは「お前の娘が産む子供に殺されるよ」と、神様に言われてビビりながら暮らしていました。

 その娘はダナエという名前の美女でした。あんまり美女だったのでゼウスに犯されて妊娠してしまいました(マジです)。

 ゼウスとダナエの間に生まれたのがアルゴスの王子ペルセウスです。アルゴス国王はビビりなので「こいつに殺される前に海に流してやるう」と、娘のダナエと孫のペルセウス木棺に入れて海に流しました。

 一応パパとしての自覚があるゼウスはぷんすか状態で「わしの息子になんてことを!アルゴスなんて王も民も怪獣クラーケンにやられちゃえ」と、怪獣をけしかけます。

 アルゴスの国王は死に、アルゴスの街は波に呑まれました。そんな中、海をどんぶらこっこしていたダナエとペルセウスは平和な島に流れ着いて月日を過ごしました。

 大人になったペルセウス遊び疲れて浜辺で寝ていたのに、神々の内輪揉めからとばっちりを受けて遠くの町にバシルーラされてしまいます。

 一応パパとしての自覚があるゼウスは知らない町にとばされたペルセウスに武器をあげます。

 かぶると透明人間になれる兜

 石も簡単に切れちゃう剣

 鏡にも使えるピカピカの盾

 の三つです。大人になったペルセウスのやることは一つです。剣も盾も放置して透明になって街に繰り出します(マジです)。

 街で美人のアンドロメダ姫の話を耳にしたペルセウスのやることは一つです。宮殿にしのびこんで姫が寝ている部屋まで透明無双です。完全におやじ譲りの女好きです。

 寝ている姫に見惚れていたら、姫はなにやら色々と苦労していることがわかります。

 姫の気を引くため、ペガサスをとっつかまえたり、沼地の獣人と闘ったり、知恵を使って姫の苦労の一部始終を解決します。姫はすっかりメロメロです。

 「やったぜ!アンドロメダ姫ゲット!」と、思った矢先、姫のお母さんが余計なことを言います。

「いやー、うちの娘は女神より美人だわさ」。地獄耳 天国耳の女神は激おこです。

「私は女神よ!ゆるせない!30日後にアンドロメダを怪獣クラーケンに捧げなかったら町ごとドカンするわ」と、どうしようもない神ばっかりです。

 ペルセウスはまだ姫とチュウすらしていないので焦ります。そこで3人組の魔女にクラーケンの倒し方を聞きに行きます。

メデューサの石化能力だったら余裕っしょ」と、魔女から聞いたペルセウスメデューサ討伐に出かけます。

 メデューサの目を見ると石になっちゃうので、ピカピカの盾を鏡にして、位置確認したところでジャキンと、メデューサの首をちょーんっ!

 ペガサスでだばだば飛んで帰って、海から出てきたクラーケンに向けてメデューサの首をシャキーン!

 

「これ見てごらーんっ!!」

これを見てー!

 見事怪獣クラーケンは石になってボロボロと崩れます。

 ペルセウスアンドロメダ姫と念願のチュウはじめてのチュウ。ゼウスは息子の活躍を見て満面のどや顔です。町ごとドカンから救われた民もアルゴスの戦士ペルセウスは本物だー! 英雄だー‼」と、大喜びです。

 ゼウス「よっしゃ、うちの息子も嫁さんも頑張ったから星座にしたろ」というわけで、ペルセウス座アンドロメダ座、ペガサス座とかはできましたとさ・・・

 お・し・ま・い

 

 この『タイタンの戦い』今回改めてじっくりと鑑賞しました。かなり冗長な部分もあるし、ブーボーという機械仕掛けのフクロウが活躍し過ぎかなと思う部分もありますが、アンドロメダ役のジュディ・バウカーが超かわいいのでそこだけでも見て帰ってくださいって感じです。とまあそれは半分冗談として・・・

 

 やっぱり、この映画の最大の見どころはレイ・ハリーハウゼンの模型によるストップモーションアニメなんですねダイナラマとかダイナメーションという技術なんですけど。例えば、メデューサと言われて我々がイメージする典型的なあの形はこの映画のデザインが原点と言われてます。そのメデューサとの闘いのシーンの緊張感たるや・・・凄まじいものがありますよ。いつまでも色褪せぬ名場面だと思います。

 

  で、問題は『アルゴスの戦士』とこのハリーハウゼンがどう関係しているのか、ここなんですけど。これに関しては面白い関係があるのですが、まあ後ほど、ということでお願いします。

  

 余談なんですけど、僕の実家にこの映画のパンフレットがたまたま保存されていたので読んでみたんですね。そしたらTHE STORYという文字ばっかりのページがあって、あらすじが書いてあんのねと思って読んでみたら、声を出して笑っちゃいました。なんとがっつりネタバレも含めた映画の内容が文字起こしされたものだったんです。ラピュタで言うなら「バルス」前にパズーとシータが飛行石に手を置くところまで書いてある感じなんです。時代ですかねえ・・・。

 

内容がほとんど全部書いてあるパンフレット

THE STORY

 

 さてさて、もうお分かりいただけたかと思うのですが『アルゴスの戦士』における「アルゴス」とは、この古代都市アルゴスのことであり、遠くアルゴスの地より甦る戦士のモデルはこのペルセウスで間違いないと思います。つまり「古代アルゴス国の戦士ペルセウス」略して「アルゴスの戦士」と、一先ず言うことができるのではないでしょうか。

 

 ただ付け加えておかなければいけないのは、あくまでも『アルゴスの戦士』という物語における脚色としてのモチーフだという点です。ゲーム上のキャラクター造形や世界観は一概に言えないところがこのゲームの魅力なんです。

 

 ところで、先ほどクラーケンにメデゥーサの首を掲げている写真を見て気づいた方もいらっしゃると思うのですが、AC版『アルゴスの戦士』の広告。「いま再び、闘いの時が来た‼」の文字と共に描かれている劇画調のイラスト、青い生首をもった戦士のイラスト、明白に『タイタンの戦い』のワンシーンをモデルにしています。

 

そのワンシーン

生首ポスター

 

 こちらです。

アルゴス生首

 PS2版『アルゴスの戦士』に出てくるディスカーマーのデザインはこの映画に出てくるピカピカの盾のデザインなんです。PS2版開発スタッフの方も設定資料集『アルゴスマニアックス』の中で参考にした映画として『タイタンの戦い』についてはさり気なく言及されてました。

 

  そしてですね、なんと偶然に実家で見つけたこの映画のパンフレット、一ページ目を開くと発見があったんです。

 

これって・・・

パンフ1ページ目

 

これですよ。

PS2

 

 ということで、FC版も含めてアルゴスの戦士』のルーツは「ギリシャ神話」ではなくギリシャ神話を題材に制作された映画『タイタンの戦い』(1981年)」にあることがわかりました。PS2版の主人公ゼーンはご覧の通り、キャラ造型もかなり引っ張られてます。

 ちなみにですが、この映画は2010年にCG全開でリメイクされています。こちらもアルゴス目線で鑑賞してみたのですが残念ながらなにも見つかりませんでした。こちらはペルセウスの伴侶がアンドロメダではなく、助言者として冒険の旅を共にするイオになって終わるんです。

 なんでだろ・・。イオ・・牝牛・・・、百眼のアルゴス・・番人・・・、24時間見張るってことは、いつも一緒にいる? あれ? 伴侶? イオとペルセウス・・・。イオとアルゴス・・・。ペルセウスアルゴス設定・・・? とか思いつつでしたけどね。これは無理筋です。

 

 「アルゴス」からここまで追っかけてみましたが、これだけではぜんっぜん終わらないからFC版『アルゴスの戦士』はすごいんです。はっきり言ってここまでが序章です。ついてきてくださいね。ゴーゴゴー!

 

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タイタンの戦い(2010) (字幕版)

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唯一無二の特殊な武器ディスカーマーのルーツはアメリカにある

 もうね、『アルゴスの戦士』といえば、なんといってもディスカーマーですよね。FC版のディスカーマーはシュシュシュシュ!っと風を切るSEと共に連射もできて、非常に爽快感のある武器ですよね。鎖モノウェポンで考えてみると、モーニングスターとかフレイルと似ている点もありますが、これらと比較するとディスカーマーの特徴である軽量感がむしろ立ってくる気がします。

 

 それではこの非常に特殊な武器であり『アルゴスの戦士』の代名詞ともいえるこのディスカーマーについて考えてみましょう・・・・

 

 いや、まあちょっとその前にですね・・・ 真剣に掘り下げる前に、なんていうか・・・

 

 ディスカーマーって要するに・・・

 

 でっかいヨーヨーだと思いませんか?

 

 これ、ちょっとこの現実を先に片付けておかないと確実にこの後の話がブレブレになる、というかなんなら茶番じみてくるので、先ずこの点について「ディスカーマーってでっかいヨーヨーじゃね?」っていう動かしがたい誰しもが抱く強烈な印象の根源を説明したいと思います。

 

 話はそんなに難しくありません。AC版の『アルゴスの戦士』が稼働された1986年という年は前年の85年から放送されていたとあるドラマの影響下でヨーヨーブームの最中にありました。そのドラマとは・・・

 

スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』です。

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 「おまんら、ゆるさんぜよ!」 というギリな決め台詞を当時人気絶頂にあったアイドルの南野陽子がビシッと言い放つ。毎週毎週お茶の間の80年代キッズたちは鼻の下が伸びたお父さんと共にしびれていました。

 

 僕の家にも当然のようにありましたよ。紐の部分がチェーンでできていてヨーヨーとしては超遊びづらいスケバン刑事ヨーヨー。もちろんパかッと開く代紋の仕掛けもありました。上記ドラマの大ヒットを受けて、駄菓子屋からスーパーからデパートまで、ガチャガチャのパチモンからバンダイのおもちゃまで、とにかく二代目麻宮サキの影響力で世の中は何度目かのヨーヨーブームだったんです。

 

 なぜ『スケバン刑事Ⅱ』かというと、僕が斉藤由貴さんより南野陽子さんが好きっ!とかいう理由ではなく、根拠のない僕の肌感覚です。いや、これ本当に、たしか斉藤由貴の第一弾スケバン刑事はそんなに流行ってなかった気がするんですよね。それだけです。すいません。

 

 先ほどもお話ししました通り、この時のヨーヨー。駄菓子屋からスーパーからデパートまでですから。もう大人も子どももおねーさんもですからね。

 

 そりゃあ武器として採用するっしょ~っ!ってことで、ディスカーマーはヨーヨーブームに感化されて子供に対する求心力を高めるためにヨーヨー化されたのだと僕は思います。

    はい! ここです。

 今、わたくし大事なことをさらっと言わせてもらいました。「ヨーヨー化された」ってところなのですが、何が言いたいかといいますと。こういことです。

 

 始めディスカーマーはヨーヨーではなかった・・・

 

 これ、僕自身も調べてみて驚きました。次にこの真実についてご説明したいと思います。いけるとこまでディスカーマーのルーツを掘り下げてみたので、お付き合い頂ければディスカーマーは全然ヨーヨーじゃないということがお分かりいただけると思います。

 

 ちなみにそのまんまヨーヨーが武器として出てくるファミコンソフトには87年3月発売のグーニーズ2 フラッテリー最後の挑戦』や88年1月発売のスケバン刑事3』があります。そうなんです。スケバン刑事』もFCゲーム化されてるんですよね。

 

ディスカーマーの名前について 

 先ずは「ディスカーマー」という妙な名前ですよね。聞いたことあるようで、実はない面白い名前です。なぜか字面だけを見ていると「ガマガエル」を連想してしてしまうのは僕だけでしょうか。

 この「ディスカーマー」は要するに・・・

 

 Disk:ディスク=円盤 + Armor:アーマー=鎧 

 ディスク と アーマー で Diskarmor「ディスカーマー」 

 ディスカーマー=円盤鎧?

 

 だと思うのですが、円盤は理解できても、どこがどう鎧なんだ問題が発生します。それにアーマーって甲冑ということですから、本来は兜も含めて上下一式の鎧セットのことなんですよね。難しいですよね。「ディスカーマー」はどう見ても「甲冑」ではなく「盾」ですよ。

 だけど「盾」にしてしまうと・・・

 

 Disk:ディスク=円盤 + Shield:シールド=盾

 ディスク と シールド で Diskield「ディスキールド」 

 ディスキールド=メタルバンド?

 

 というように、少しアングラ系のサブカル臭(このブログもサブカルだけどね)が出てしまいます。それにキールド」って単語の座りが悪いですよね。そこで細かいことは気にせずに言葉の響きを重視して「ディスカーマー」になったのだと思います。

 

 ただし「円盤」と「盾」はそれぞれに「ディスカーマー」にとって面白い関連性を見出すことができるので、一つ一つ見ていきたいと思います。

 

◆Disk:ディスク=円盤 と 「ディスカーマー」

 さきほど『アルゴスの戦士』のバックボーンとして映画『タイタンの戦い』(1981)があり、その背景にギリシャ神話があるということはお話ししました。注目したいのは、映画のあらすじで紹介した古代都市アルゴスの国王アクリシオスその人なのですが、彼は劇中だと怪獣クラーケンの起こした災害の中、どさくさに紛れてゼウスに直接殺されます(マジです)。ところが題材となったギリシャ神話の方では少し末路の様子が違うんです。

 ギリシャ神話では・・・

 

 見事怪獣クラーケンをやっつけたペルセウスアンドロメダ姫と念願のチュウはじめてのチュウを果たし、故国のアルゴスに凱旋帰国します。

 平和なある日、ペルセウスはラリサ(実在します)に行って競技大会に参加することになりました。

 ペルセウス「よっしゃー!今日は優勝するぞー」と意気揚々円盤投げにエントリー。

 ペルセウスが力の限りぐりんと円盤を投擲ぃー!・・・ばちこーーんっ!!

 ペルセウス「やばっ! ちょっ、人に当たっちゃったよ・・・あわわわ」

 なんと皮肉な出来事なのでしょう。実はこの時、ペルセウスの円盤に当たって亡くなった人物がどさくさに紛れてラリサに亡命していたアルゴスの国王アクリシオスその人だったのです。

 そうです。「お前の娘が産む子供に殺されるよ」と、アクリシオスが神様に言われていたことが現実となったのでした

 おわり。

 

 尊属殺のなんとも忌まわしい話ですが、注目すべきは「円盤」に対するギリシャ神話内での認識です。次にギリシャ神話にはこんな話もあるんです。

 

 ある日、アポロンとヒュアキントスは二人で円盤投げをして遊んでいました。

 アポロン「よいしょーっ!」ヒュン!

 ヒュアキントス「わーっ!・・・っとっとっと」

 アポロン「ほんなら・・・これならどうだーっ!」ヒュン!

 ヒュアキントス「わーっ!とれないよーっ!」

 と、ヒュアキントスの頭の上を越えて飛んでいくアポロンの投げた円盤・・・

 ヒュアキントス「待って、待ってーっ!」円盤を追いかけるヒュアキントス。

 と、そこへぴゅうーっ!と突風が吹きました。

 なんと、突風に煽られて軌道を大きく変える円盤がぁー!・・・ばちこーんっ!!

 アポロン「あわわわ。俺の投げた円盤がヒュアキンに当たっちゃったよ」

 なんと悲しい出来事なのでしょう。ヒュアキントスはアポロンの投げた円盤に当たって亡くなってしまったのです。そして彼の額から流れた血液から花が咲き・・人々はその花をヒヤシンスと呼んだそうな・・・

 劇終。

 

 やはりこの話も「円盤」の扱いがアクリシオスの話と共通していますよね。それは・・・

 

 円盤には武器足り得る殺傷能力がある。

 

 ということだと思います。まとめるとこうなります。

 

アルゴスの戦士』のモチーフである『タイタンの戦い』のモデルとなったギリシャ神話において「アルゴスの国王アクリシオスはアルゴスの戦士ペルセウスの投げた円盤に当たって死ぬ」というくだりがあるし、円盤で人が死ぬギリシャ神話は他にもあることからディスカーマーの名前を決める際に「ヨーヨー的この武器を円盤寄りの名前にしたらギリシャ感も出るし、よくない? ディスクなんちゃら・・・みたいなさあ」

 

 つまり、ディスカーマーというオリジナルな名前にギリシャの円盤としての背景を内包させることでヨーヨーから離れてプレイしてほしかった。ということでしょう。結果ほとんどの人が「ヨーヨーだね」って思っちゃってるわけなんですけどね。

 

◆Shield:シールド=盾 と 「ディスカーマー」

 それではいよいよ「盾」と「ディスカーマー」ひいては「盾」と『アルゴスの戦士との関係に迫りたいと思います。実はこの項が今回の徒然話で僕が調べていて一番驚いた部分なんです。それでは、行ってみましょう!

 

 えっと。何からお話すればよいのか・・・『タイタンの戦い』あらすじ紹介のところで、パンフの写真からPS2版『アルゴスの戦士』パッケージイラストのモチーフを示しました。さっきも指摘したんですけど、この二枚の画像を見比べてみると明白なのですが、PS2版『アルゴスの戦士』の「ディスカーマー」のデザインは『タイタンの戦い』に登場する「盾」そのものですよね。

 

 重要なのは防具としての「盾」のデザインを武器としての「ディスカーマー」に転移させている、という点です。

 

 どうでしょうか、ここらでいくつかの疑問が立ち上がりませんか? というか、なんならもうずっとみなさんにもどこかで違和感があったはずなんですね。僕も調べているときにずっと思っていたことなのでよくわかります。概ねこんな感じの疑問です。

 

・仮に『タイタンの戦い』を参考にしたのならば、なぜ武器が「剣」のゲームじゃないの?

・そもそも元祖AC版『アルゴスの戦士』にギリシャ神話の要素なんてなくね?

・なんならFC版『アルゴスの戦士』もキャラの名前や地名以外にギリシャ要素ある?

 

 これです。そうなんですね。確かに『タイタンの戦い』は骨太背景として『アルゴスの戦士』にとって重要だと僕も思いますし、これまでの内容からみなさんも否定はできない関連性をご理解されたことと思います。

 

 しかしですね。やはり解せない部分があるんです。僕が一番気になったのはなんで武器が「剣」じゃないんだ? という部分でした。それに『アルゴスの戦士』のゲーム画面を見ていても、FC版のポップなパッケージを見ていてもギリシャ神話要素なんてないんですよね。

 

 ゲーム画面をぱっと見ると、舞台は古代ギリシャの都市っていうより原始時代の荒野って感じですし、少なくともAC・FC版の主人公のキャラデザインはペルセウスとは遠い気もします。

 

 ここまでの長文はなんだったのって思われるかもしれませんが大丈夫です、つながっています。ここで先ほどわざわざ付け足した「脚色として」という前置きが生きてきます。

 

    ここで、一回ぱっと見の印象で『アルゴスの戦士』を解釈し直すと・・・

 

「舞台は文明未発達の荒野。ハチガネみたいな冠を付けた主人公が投げると戻ってくる盾みたいな武器で異形の獣等と戦う」

 

 これです。このコンセプトです。こちらが実は『アルゴスの戦士』の真実なんです。あまりにもモチーフとしての『タイタンの戦い』(1981)が強烈なので、我々の意識もギリシャギリシャへと心理的にひっぱられてしまうのですが、一回リセットしましょう。そもそもキャラクターデザインもぜんっぜん違うし、メデューサもクラーケンもペガサスも出てこない時点でおかしいんです。

 そこで・・・

 

タイタンの戦い』は『アルゴスの戦士』における真のモデルを捉えづらくするためのカバーストーリーとして利用したのではなかろうか・・・

 

 という仮説を立ててみるとメタルギア的スパイもの感でワクワクするし、武器が剣じゃないことも理解できるんです。要するにタイタンの戦い』は後付け世界観じゃないかしら?     ってことなんです。ゲームができてから文字通りカバーをかけるように後付けした世界観、ということは本当のモデルがあるはず・・。

 

 そんなバナナっ! と思われたかもしれませんが、あったんです。上記のコンセプトに完全に合致している作品が! 盾を投げて武器にするヒーローが出てくるその作品とは・・・

 

 ずばり『怪獣王ターガン』(1967)です。 

怪獣王ターガン

 『怪獣王ターガン』は1967年にアメリカのアニメ制作会社、ハンナ・バーベラ・プロダクションが発表したTVアニメ作品です。同社の有名どころには『フリントストーン』『チキチキマシン猛レース』『クマゴロー』『トムとジェリー』などが挙げられるかと思います。僕個人的にはアボットコステロが好きでした。小学校二年生くらいの夏休みにですね。早朝になぜかこれが放送されていたんです。「アボット~~~っ」という情けない声を今でもたまに真似してます。

 

 この作品の原題は『The Herculoids』(ハーキュロイズ)というのですが、某巨大動画サイトにもほとんど上がっていませんし『怪獣王ターガン』としても映像作品が未商品化のようなので、例によってアルゴスを求めて輸入盤DVDで全エピソードを鑑賞致しました。

 

 いや、観る前は苦行になりそうだなって心配だったのですが、いざ観てみますとすっかりファンになってしまいまして、観終わるときには少し寂しかったくらいでした。なんならそのうち『怪獣王ターガン』の記事を書いてみても面白いかもしれません。

 

 どのような内容かというと・・・

 

 文明未発達の惑星で、怪獣たちと平和に暮らしている三人家族が、緑もほとんどない岩と沼だらけの土地に住んでいるのに、なぜか毎回侵略者に生活を邪魔される話

 

 なんです。これだけでもなんだかおかしくて愉快なのですが、ここへ更なるヘンテコ設定がのっかっているのでもうたまりません。気づく限りで紹介すると・・・

 

・家族三人が名前で呼び合う

 息子のドルノはおとんとおかんに向かって平然と下の名前で声を掛けます。親父に向かって「ひろし!」母親に向かって「みさえ!」みたいでじわじわきます。

・小石を拾って投げると爆発する

 理由は全く不明なのですが、この星の鉱物は衝撃を与えると爆発する性質があるようで、これを利用したパチンコ攻撃がザンダー(ターガン)の主力になってます。

・特に魅力を感じない土地なのに恐ろしいほど狙われている

 緑もない、文明もない、海もない、川もない、あるのは荒野と岩山と沼。このような辺境の土地なのにマッドサイエンティストや宇宙人、別の土地の人たちに超狙われてます。

・開幕30秒以内に侵略される

 OP終了後、最速で暗転明け5秒後くらいにレーザーを家に打ち込まれたときは爆笑しました。もはや後半は何秒で侵略者が現れるか数えながら観るのが楽しかったくらいです。

・文明のない土地に暮らしているのに機械にやたらと詳しい

 これが本当に面白くて、主人公のザンダー(ターガン)は敵のロケットを操縦したり、レーザーやコンピュータについて詳しいんです。彼の過去が気になります。

・文明のない土地での戦いなのにほとんどレーザー合戦

 もうですね毎回毎回毎回毎回。レーザーレーザーまたレーザーです。こんなにたくさんのレーザーが出てくるアニメ作品は他にないんじゃないでしょうか。

・黄色いスライムのグループ&グリープ(ヒューヒューとポーポー)が無敵

 ハーキュロイズというのはザンダーが率いる怪獣たちのチーム名のようなものなのですが、メンバーに黄色いスライムの親子のような怪獣がいるんです。この二体がなんでもあり設定で、あまりにも何でもありすぎるので、この作品が映画化されることはないだろうな、と観ていて切なくなります。

 

 

ここが彼らの家です。地下に石油でも埋まってるのか。

ターガンの家

 

 次はいよいよ登場人物の紹介です。すっかりアルゴスの戦士』のことを忘れてしまったみなさんも眠くならないように画像多めで行きたいと思います。

 

・岩男のイグー

 邦名 リキラー

・特徴 無敵 イワオ ドテチン

イグー

 もう完全にキャラがドテチンです。見た目は完全にイワオです。怪力で少しドジで無敵。家族の息子ドルノが彼を下に見ている描写が何度か出てきました。良くも悪くもアメリカ的です。

 

・レーザードラゴンのゾック

 邦名 マリュー

・特徴 無敵 レーザー 背中に乗れる

ゾック

 両目と尻尾の先端から様々な特徴を持つレーザーをバンバン打ちます。確認できた特徴は「物体消失」「燃やす」「溶かす」「押す」「削る」「治療」などでした。これらを打ち分けることが彼にはできるようで、無敵です。

 

 これは・・・。

マリュー

 

アルゴスのマリュー

  ・・・。

 

・角大砲のタンドロ

 邦名 タングロ

・特徴 無敵 角大砲 背中に乗れる

タンドロ

 一見サイのように見える彼は角のような頭の先端から上述した爆発する小石をバンバンぶっぱなします。どうやってリロードしてるのか謎です。哺乳類に見えて脚が8本もあるし、しかもですね、この脚がぐいーんと3mくらい伸びるんです。怖すぎです。極めつけは首を支点にして頭をドリルのように回転させて岩壁に穴を穿ったりします。化け物ナンバーワン決定です。

 

 これは・・・。

タングロ

 

アルゴスのタンドロ

 ・・・。

 

・何でもあり生命体のグループ&グリープ

 邦名 ヒューヒューとポーポー

・特徴 無敵 パラシュート トランポリン

グループ&グリープ

  無敵のスライム、グループ&グリープです。親子のように見えるのはあくまでも象徴としての普段の在り方で、二匹とも物体としての質量、延長を自由自在に変化させることができます。弱点があるとしたら硬度を変えて叩く!というマッスルタワーにおける対ブヨン戦みたいな叩き方以外にないと思います。

 

 人間にもなれる。

ヒューヒューとポーポー

 

 

・みんなのリーダー ザンダー

 邦名 ターガン

・特徴 パチンコ 木の盾 ツタ移動

ザンダー

  このアニメの主人公です。非常にアメリカ的なマッチョダディです。裸一貫なのですが機械に詳しかったり、獣人の言葉が理解できたり、ツタを使って瞬間移動したりと、非常に謎の多い人物です。

 やっとこさ本題なのですが、彼の武器には二つあります。一つは打つたびに同じセルが使いまわされることの多い パチンコです。

パチンコ

  パチンコが出てくるとこのカットにほとんどといっていいほど変わるので愉快です。

当たると爆発する例の小石をぶっぱなします。

 そして、もう一つの武器が・・・

 

 投げると戻ってくる盾 なんです。

 

  投げると・・・

ディスカーマー1

 ・・・戻ってきます。 

 

 

 投げると・・・

f:id:mojamonta:20200411135835g:plain

 ・・・戻ってきます。

 

 

 投げると・・・

f:id:mojamonta:20200411135950g:plain

  ・・・戻ってきます。

 

  

 これと・・・

f:id:mojamonta:20200411140509j:plain

 

 これで・・・

f:id:mojamonta:20200329152335j:plain

 

  こう!

f:id:mojamonta:20200404062351j:plain

 

 こいつは・・・

 

 こいつ? 

ターガンの敵

 

 こいつは・・・

アルゴスの敵

 

 こいつ?

ターガンの敵ドロドロ

 

 獣王ライガー・・・?

怪 獣王ターガン・・・?

 

 

 はい! というわけで・・・

 

 お分かりいただけたかと思いますが、改めて断言します。アルゴスの戦士』の本当のルーツは『怪獣王ターガン』にあります。主人公のキャラクターデザインは言わずもがな、舞台設定や一部のキャラクターもこのアニメをモデルにして制作されたと考えてほぼ間違いないと思います。なので武器が剣のゲームになるわけがないし、ギリシャ要素なんてこじつけでもない限りゼロなんです。

 

 そして、ディスカーマーのルーツもこのアニメの投げると戻ってくる盾にあると見て間違いないでしょう。

 

 ということで、ディスカーマーはヨーヨーではなく、投げると戻ってくるブーメランのような盾が原点だったんです。もう僕は泣いてしまいそうです。感動しました。

 

 更に類推して考えてみると「投げると戻ってくるブーメランのような盾」の原点がこの作品より更に20年以上も前から同国アメリカにはあったんです。そうです。

 

 キャプテンアメリカ』(1941)です。なんとですね。このキャプテンアメリカ1941年のコミック掲載時には既に投げると戻ってくるブーメランのような盾の描写があったそうです。古典のような同国の作品の影響を『怪獣王ターガン』が受けていないとは考えづらいので・・・はい! こういうことが言えちゃうんです。

 

 アルゴスの戦士』ディスカーマーのルーツはアメリカのヒーロー『キャプテンアメリカ』にあった

 

 ということだったんです。

 

 まとめます。

アルゴスの戦士』というゲーム自体のルーツは『怪獣王ターガン』にありました。キャラクターデザインなどはこの作品をモデルにして制作し、世界観を構築するに際し『タイタンの戦い』を脚色として取り入れることで「アルゴス」という名前や地名などのギリシャ要素を持ってこれたのだと思います。また、ディスカーマーについてはターガンのように盾を投げたりパチンコで攻撃する主人公にしてしまうと既視感がある(『魔界村』(1985)など)ので、他のゲームとの差別化という意味で当時ブーム最中にあったヨーヨーと合体させた、という解釈でほぼ間違いないでしょう。

 

 時代も国も超えて、僕たちを感動させてくれた『アルゴスの戦士』に今日は乾杯しましょう。こういうアイディアの積み重ねというか、創造が創造を生む様というか、感動が波及して新たな作品を生むというか・・・とにかく僕は非常に感銘を受けました。ゲームって素晴らしいなと改めて思わせてくれた当時のテクモ制作陣に時を超えて敬意を表します。

 

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全く新しい世界の創造は蓮谷通治さんの音楽で完成している

 さあ、残すは音楽の話とハリーハウゼンの話のみです。毎回のことですが音楽に関する話は多分に僕の偏愛からくる妄想の部分が大きくなるので、肩の力を思いっきり抜いてくださいね。ですが、FC版『アルゴスの戦士』のメインテーマともいえる夕陽のステージにおけるBGMについては真剣に考察してみたので、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

 

 みなさんもFC版『アルゴスの戦士』の音楽は? と聞かれたら真っ先に脳内再生されるのはあの夕陽を背中に受けて荒野を走るゲーム冒頭のステージの曲だと思います。僕もそうです。んで、この曲なんですけど、印象的なメロディですよね。大事なのはあのタイトル画面でスタートボタンを押して画面が切り替わった瞬間に鳴るあれ。

 

 た~ら~♪たららら~たららら~♪ とか で~れ~♪でれれれ~でれれれ~♪

 

 なんでも構わないのですが、要はパンパカパーンみたいなファンファーレ的な奴です。これ・・・なんだと思われますか?ってことなんですよ。これですね。まあ僕だったらということで、真剣に考えてみたんですけど、作曲家の蓮谷通治さんもこのような辿り方をしていって作ったんじゃないかなあ、と僕は思うんです。説明します。

 

 おそらくAC版からFC版にリニューアルするにあたって、何の前情報もなく「新しいゲーム作るから、新しい曲作って~」とは降りてきていないだろう、というのは想像できますよね。そこで蓮谷通治さんのところに来たであろうメモ、まあ企画書でもいいのですが、こんなことが書いてあった・・・だろうと思うんです。それは・・・

 

 FC版にあたって音楽は刷新

 『怪獣王ターガン』『タイタンの戦い』etc...

 ゲーム冒頭にAC版で好評だった「夕陽」のステージを持ってくる。

 

 これを見てですね、先ず『怪獣王ターガン』を知らなかったら、どう思いますか? そうです! あなたも蓮谷さんも100パーセント同じことが頭に浮かんだはずなんです。僕も当然同じです。せーので行きましょう。

 ・・・・せ~のっ

 

 『ターザン』  はい、みんな同じです。

 

 ターガンってなんだよって話ですから、普通はターザンでしょうよ。んでですね。さっきの冒頭の曲の例のあれに戻ります。これね・・・

 

 ワイズミュラー版ターザンの「アーアアー!!」にそっくりなんです。某巨大動画サイトに上がってるのでターザン・ワイズミュラーとかで検索して聞いてみてください。驚かれると思います。

 

 次にですね「夕陽」ですよ。これ夕陽ときたら、とりあえず夕陽に関わるような曲を片っ端から聴くのがクリエイターってもんだと僕は思うんです。んでですね。まずは夕陽の曲を、と注文を受けた作曲家がエンニオ・モリコーネの『夕陽のガンマン』を外すとは思えないんです。でね。改めて同氏の名曲『夕陽のガンマン』と『続・夕陽のガンマン』を聴いてみたら・・・

 

 たったかたったかたったかたったかっていうあのリズム。おそらくは馬のかける音をイメージしたであろうあのリズム。思いっきりアルゴスの方も踏襲してるじゃないですか。あのキーボードのだったらだったらだったらって伴奏はおそらくですよ。おそらくだけど、ここからきてる可能性低くはないなと僕は思います。ちなみにアーアアー的ゲーム冒頭のあれも『続・夕陽のガンマン』から来てる可能性ありますよ。

 

 それとメロディなんですが、これは僕の妄想なので強くは押しませんけど夕陽をバックに・・から連想してみて、僕がたどり着いたのはルパン三世の『ワルサーP38だったんですね。なんとなくメロディが似てる気がするんですよね。

 

 他にも『海のトリトン』のOPの歌

    『今日もどこかでデビルマン』  

    『超人バロム1』のOPの歌

 

 辺りがフムフムできるのでお勧めです。どの曲も名曲過ぎて『アルゴスの戦士』のことは忘れてしまうかも知れないですけどね。 

 

    また、雄大な山の景色をバックにしたステージ2.スエル山地の曲ですが、リズムは最初の曲の”たったか”を踏襲しているけれど、メロディが荘厳ですよね。雄大な景色。山々。大自然。そんなことを連想しますし、スエル山地のBGMとしてピッタリです。

 

  雄大な景色。山々。大自然。ときたらジャングル大帝ですよね・・・でもないか。まあ、僕はスエル山地の曲はアニメ『ジャングル大帝』のOP曲に寄せている気がするんです。もちろん古い方のレオです。こちらも聴いてみてください。おそらく「あー」ぐらいの反応はできると思います。というか映像もスエル山地してるので、そちらも併せてご覧になってください。

 

 と、こんな感じでですね、一曲一曲やっていっても際限がないので、僕がFC版『アルゴスの戦士』の音楽のなにが特別すごいと感じるのか、とっととお話しさせていただきたいと思います。

 

 ◆特定できない異国情緒こそファンタジーの本質

 実はこの辺から今回のFC版『アルゴスの戦士』徒然話の結論になっていくのですが、要するに蓮谷通治さんの音楽のすごさって、特定不能な異国情緒にあるんだと思います。これ、もうそのままFC版『アルゴスの戦士』の魅力なんです。

 

 冒頭の曲は『夕陽のガンマン』ですから、アメリカ西部。スエル山地・ガラガンダ連峰はレオだからアフリカのサバンナ。ゲルロゼオの曲はジョン・ウィリアムズの映画音楽を彷彿とさせる名曲だと僕は思うんですけど、必然的に『インディ・ジョーンズ』を連想して山あり谷ありジャングル感ですよ。ドラゴの神殿の曲のメロディはこれ、コーランにかなり近しい、なのでインドネシアを筆頭にイスラム圏を連想します。また、ラグラサンド高地の楽しい曲はしっかりロシア民謡してるし、ジブリスティックな天空の島ラルピウスはオリエンタルスケールでアラビア諸国漫遊です。

 

 とまあ、ここまで徹底されていると「エキゾチック」の一言で片づけてしまうのは失礼になるんじゃないかと、僕は思います。雰囲気だけの生半可な作り方では全然ない。これね、蓮谷通治さんは様々な異国の音楽を意識的に取り入れてますよね。もちろん僕には氏の明確な意図はわかりませんけど、このことで何が生まれているか、ということははっきりとわかります。つまりこういことです・・・

 

 世界の様々な音楽を取り入れたゲーム音楽が『アルゴスの戦士』の捉えどころのない世界観を演出している

    

 これです。このゲームの唯一無二といっていい独特の異国情緒は多分に蓮谷通治さんの音楽の恩恵に与っているんです世界観を限定せずに全く新しい異国を創造するってものすごく難しいと思うんですけど、FC版『アルゴスの戦士』は主人公と仙人とインドラの三つの型しか出てこないのに「あ、ここに世界がある。知らない異国がある」っていうじわ~っとした実感があるんです。

 

 その知らない異国を戦士になって、見たこともない武器で見たこともない獣人たちと闘うわけですから、ものすごい孤独感もあるし、なんなら恐怖感も立ち上がってくる。んでね。「確かにそこにあると錯覚する異国」ひいては「確かにそこにあると錯覚する異世界って、これ、ファンタジーの必須条件だと僕は思ってるんです。何が言いたいかというと、FC版『アルゴスの戦士』はアクションゲームである以前にファンタジーとして超優秀だってことなんですね。

 

 本記事でも指摘していますが本当に美しい背景グラフィックや戦士のリアルなデザインとダイナミックな四肢の動きもそういったリアルな異世界の創造に貢献していることは間違いないと思います。数少ない仙人のセリフの中に「”どらご”にあったらいってくれ わしのむすめをかえせとな。 うっううう」ってのがありましたよね。これ絶妙ですよ。このセリフをドラゴの神殿で会う仙人に言わせるあたりに抜群の文学的センスを感じます。一気に持っていかれるし、背景が見えてきますよね。「あ、この人たちにも生活があって家族がいて、今はそれが奪われてるんだ」っていう実感が湧いてきます。

 

 それにモデル『怪獣王ターガン』とモチーフ『タイタンの戦い』で外堀が埋まっているのに、そこへインドラってヒンドゥー教も登場ですから、もう全く捉えどころがない。それらの要素と蓮谷さんの音楽がゲームに結晶して全く新しいファンタジー異世界が見事に完成しています。

 

 だーかーら! 思いっきり世界観をギリシャに寄せてしまったPS2版はダメなんです。『アルゴスマニアックス』に出てた制作者インタビューでですね。音楽もギリシャの民族楽器ブズーキを使いましたとか、言語もギリシャ語にしようと思ってたんですってさ・・・発想が貧弱ですよ。そのくせ『タイタンの戦い』や『アルゴ探検隊の大冒険』に対する明言はわざとらしく別の映画をいくつか挙げることで避けてるし、その挙げてる映画も・・・チッていう。まじかよ! って思ったのは「当時の開発スタッフに色々聞きに行ったら忘れたって言われました」って、そんなわけねーだろ!っていうね。なんかリメイクじゃないんで、みたいなこと言ってましたけど、それもダサい! 特に、ギリシャが好きだっつって、ギリシャに寄せるならね、嫁を弟子に寝取られたみたいな理由で魔人に堕ちたあの人。「イカロス」の本当の名前は「アリストテレス」って、ちょっとちょっと。哲人なめんなっ! って志らく師匠も言うと思います。ぜんぜんギリシャのことわかってないっていうか、ギリシャにも原作にも全然愛が感じられませんよ。 

 すいません。FC版に話を戻します。

 

 ◆リアルなファンタジー世界の演出として完璧なボス戦

 実はこのアルゴスの戦士』もまた効果音が素晴らしいですよね。名作の条件なのかも知れないですね。特筆すべきは「ゔっ」ってやつです。ダメージをくらったときの「ゔっ」ってあの音、戦士のうめきに聞こえなくもない。これでまたリアリティが増して没入感も出てくる。ディスカーマーの音も爽快ですし、ジャンプ音もリアルなんですよね「ザッ」っていう。決してディフォルメはしていない、というか真面目にリアルな音作りをしていて本当に好感が持てます。そして・・・

 

 ボス戦の音楽(効果音)はファミコン史に残すべき名演出だと思います。

 

 あの「ブラオンブラオン!!」みたいな「プギャオンプギャオン!!」みたいな音。静寂に鳴り響く未知の獣の鳴き声として機能しているあの音。あの演出を考えた方が蓮谷さんなのかはわかりませんが天才的なセンスですよね。足し引きでいうところの素晴らしい引きのアイディアだと思います。あそこで同社の忍者龍剣伝』のようにボス戦としてのハッキリした音楽がついていたら、あそこまでの緊張感は出ないだろうし、音楽を引いて効果音的な鳴き声にしたことでボスキャラたちの実存が鮮明になってます。「今そこに確かに存在する未知の獣感」バンバンです

 

FC版『アルゴスの戦士』はレイ・ハリーハウゼン賛歌だ!

 ついにボス戦の話が出ましたので、今回の徒然話の中で最後にして最大の核心に迫りたいと思います。もうご覧になって頂いた方が早いと思われるので。続けて行きます。

 

 『アルゴ探検隊の大冒険』(1963)より

ハーピー

このハーピーのバタバタ感です。

 

アルゴスの戦士』(1987)より

モルゴリン

 このモルゴリンのバタバタ感です。

 

アルゴ探検隊の大冒険』(1963)より

ヒュドラ

このヒュドラのカクカク感です。

 

 『アルゴスの戦士』(1987)より

デスピゴ

このデスピゴのカクカク感です。

 

 これ、僕にはハリーハウゼンストップモーションアニメをリスペクトして作られたとしか思えません。いや、そう思いたい。いや、もうそう信じる! ここまで引っ張っておいてこんなんでごめんなさい。だけど、そう見えなくもないし、僕ですら感じたことなので意図せずとも制作陣のうちでこれが話題にならないとは・・・ねえ。

 

 というわけです。これに気づいた日は「『アルゴスの戦士』ってすげえ」とつぶやきながら僕は寝ました。みなさんも今日は『アルゴスの戦士』に思いを馳せながらお部屋の電気を消してください。

 

はちゃめちゃ大進撃とはなんだったのか!?

 

 さあ、いよいよFC版『アルゴスの戦士』最大の謎とされる「はちゃめちゃ大進撃」の解明です。が、実はこれ、ここまで読んでくれている方ならもうわかってきていると思うんです。僕はそうだったのですが、どうでしょうか。もう以前ほど「はちゃめちゃ大進撃」が意味不明なサブタイトルだとは感じないんじゃないでしょうか。

 

 そうなんです。もうお気づきですよね。これまでをおさらいしてみればはっきりします。

 

FC版『アルゴスの戦士

 世界観

 ・プロローグ 救世主物語 キリスト教 

 ・RPG要素 経験値 腕力 胸力

 ・映画『タイタンの戦い』(1981) レイ・ハリーハウゼン 脚色

 ・アニメ『怪獣王ターガン』(1967) キャラクター  舞台背景  武器

 ・ドラマ『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』(1985) 武器  ヨーヨー

 ・ギリシャ神話 地名など

 ・インドラ ヒンドゥー教 キーアイテムを与える闘神

 

 音楽

 ・『ターザン』 MGM ジョニー・ワイズミュラー

 ・『夕陽のガンマン』(1965)

 ・『ジャングル大帝』(1965)

 ・世界各地の民族音楽 etc・・・

 

 

 はい。そうですね。もうはちゃめちゃです。

「なんだこれは? こんなに詰め込んでまとまるのか? はちゃめちゃじゃないか」と言ってご立腹の社長の顔が目に浮かぶようです。

 というわけで、もうお分かりですよね。FC版『アルゴスの戦士』は・・・

 

 企画自体がはちゃめちゃだったんです。

 

 ありがとうございました。

 

 

FC版『アルゴスの戦士 はちゃめちゃ大進撃』は後世に残すべき、素晴らしいファンタジーアクションゲームだと思います。まちがいなく再神作です!

 なにがなんでも再プレイしてください!!

 

 

 

おまけ

このゲームに関心の薄い妻もんに『アルゴスの戦士』をやってもらいました。

 

 無言でプレイしていたので「どう?」と聞いてみると・・・

f:id:mojamonta:20200211203109p:plain 

 

なんかしゃがんでカメをやっつけるのは楽しい・・・。

 

 カメ? ああ、プラコケリスのことか!

 

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ねえ、この人何で攻撃してるの、これ・・・。

 

お! なんに見える?

 

妻もん?


  

けん玉? あ、いや違う、ヨーヨー?・・・。

 

おー! やっぱりヨーヨーに見えるよね。と思ったら・・・

 

妻もんrikai  

 

あーなんだわかった!ドライヤーじゃん!変なの!

 

・・・はい?

 

妻もんプレイ

 

・・・え?

 

妻もんドライヤー

 

・・・ん?

 

ドライヤー?

 

・・・あ!

 

ドライヤー

 

 

ドライカーマー



 

 

それでは、また次回お会いしましょう!

 

 

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